その他分野|小児慢性腎臓病(CKD)(平成23年度)

しょうにまんせいじんぞうびょう
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1. 概要

慢性腎臓病(CKD)は種々の要因により腎機能障害が長期にわたって進行する病態である。多くは不可逆性であり、末期腎不全に進行すれば尿毒症が出現し透析療法もしくは腎移植が必要となる。小児期に末期腎不全となった場合には、生涯にわたる透析療法あるいは複数回の腎移植に加え、成長発達障害等も合併し、生活の質や社会人としての生産性が低下する可能性が高い。従って小児CKDの実態を把握し進行抑制につとめることはきわめて重要である。

2. 疫学

小児の疫学調査は世界的にも少ない。平成22年度厚生労働省難治性疾患克服研究事業の「本邦小児の新たな診断基準による小児慢性腎臓病(CKD)の実態把握のための調査研究(研究代表者石倉健司)」のおいて、本邦で初めての全国調査を行った。調査の回収率は77.7%であり、全国112施設にCKDステージ3-5の患者440人を確認した(男児265人、女児174人、性別不明1人、年齢中央値8.66歳、ステージ3: 311人、4: 103人、5: 26人)。またこの結果から、 2010年4月1日時点の全国の小児CKD患者は528.5人(95%CI:486.1-570.9)と推計される。これは本邦小児人口10万人当たり2.90人の有病率である。

3. 原因

小児CKDの原疾患は先天性腎尿路異常(低形成・異形成腎や種々の腎尿路奇形)が多数を占める。一部に遺伝子異常(PAX2やWT1)や奇形症候群の合併が報告されているが、多くは未だ原因不明である。次いで頻度が高い原疾患として巣状分節性糸球体硬化症があげられるが、これも一部が遺伝子異常によるとされているものの、多くは特発性とされ原因不明である。

4. 症状

腎尿路異常を原疾患とする患者では多飲・多尿や低身長を認める。また一般にCKDの進行とともに、いわゆる尿毒症として全身の様々な臓器の症状が出現する。具体的には心血管障害、精神神経症、貧血や出血傾向など血液異常、電解質異常などがある。自覚症状として食欲不振、倦怠感などが見られ、腎性貧血が進めば動悸、息切れとともに倦怠感も増強する。

5. 合併症

小児CKD患者では成長障害(腎性低身長)や発達障害が高頻度に見られる。また腎性貧血や、二次性副甲状腺機能亢進症などによる腎性骨症、電解質異常(高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症など)や代謝性アシドーシスが出現する。さらに体液量増加(溢水)による心不全、肺水腫や高血圧など心循環器合併症は最大の死因である。またこれらと精神神経症が相まって社会不適応が起こる可能性がある。

6. 治療法

食事療法や各症状にあわせた対症療法が主体となる。電解質異常に対するカリウムやリンの吸着薬投与、代謝性アシドーシスに対する重曹投与、腎性貧血に対するエリスロポエチン注射や鉄剤投与、腎性骨症および二次性副甲状腺機能亢進症に対する活性型ビタミンD製剤の投与などを行う。さらに体液量増加に対しては利尿剤、高血圧に対しては降圧薬を用いる。小児に於いて腎保護作用を目的とした治療はほとんどエビデンスが無い。

7. 研究班

小児保存期CKD患者の長期予後の解明と腎不全進行抑制の治療法の確立班