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血液・凝固系疾患ヘパリン起因性血小板減少症(平成23年度)

へぱりんきいんせいけっしょうばんげんしょうしょう
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1. 概要

ヘパリン起因性血小板減少症は生命予後に関わるヘパリンの重篤な副作用である。未分画ヘパリン、低分子量ヘパリンは本邦において、例えば血栓塞栓症の治療、予防、カテーテル治療に関する抗凝固、人工心肺使用手術等で最も汎用されている抗凝固薬である。しかしながら、ある状況下で、この抗凝固薬が免疫学的機序を介して血栓塞栓症を引き起こすことが明らかになってきており、その病態がヘパリン起因性血小板減少症として注目されている。本邦でも、2006年4月にヘパリンの添付文書が改訂され、その副作用としてヘパリン起因性血小板減少症が言及されることとなり、認知が進んでいる。しかし、ヘパリン起因性血小板減少症を単独で診断できる診断方法は未だ存在せず、臨床的、免疫学的診断法を組み合わせて診断予測せざるを得ないのが現状である。

2. 疫学

ヘパリン起因性血小板減少症の発症頻度は、基礎疾患によって異なることが知られている。本邦において実施された心臓血管外科手術患者、整形外科(人工股関節、膝関節置換術)手術患者、脳卒中患者における前向き観察研究では、ヘパリン起因性血小板減少症の発症頻度は0.01%~1%程度と、海外の報告と同等もしくは若干少ない発症割合であると推定している。

3. 原因

[推定されるヘパリン起因性血小板減少症発症メカニズム]ヘパリン投与を受ける患者は、血栓症を発症しているもしくは手術などを受ける患者である。これらの患者では、血小板が容易に活性化されやすく、アルファ顆粒から血小板第4因子(PF4)が放出される。この状況で、ヘパリンが投与されると、ただちにヘパリンとPF4の複合体が形成され、PF4の構造変化が起こり、新たな抗原性が提示されることで、抗PF4/ヘパリン抗体が産生される。その一部にFcレセプターを介して血小板を活性化させる能力のあるものが存在し(HIT抗体と呼ばれる)、凝固活性化を促すマイクロパーティクルの放出が起こり、トロンビンの過剰産生がおこる。さらに、HIT抗体は、単球、血管内皮細胞の組織因子の発現を増加させ、トロンビンの過剰産生による凝固活性化によって、血小板減少症、血栓塞栓症を発症するものと推定されている。

4. 症状

ヘパリン起因性血小板減少症の主な症状は血小板減少症であり、ヘパリン投与前や術後血小板数が回復したレベルから30~50%以上の血小板数の低下を来たす。しかし血小板減少の程度は極端ではなく、平均最低血小板数は6万/μL程度であり、ヘパリン起因性血小板減少症発症患者の85~90%は、最低血小板数は2万/μL以上に保たれる。

5. 合併症

ヘパリン起因性血小板減少症は血小板減少症であるが出血することは希で、血栓塞栓症を高率に合併する。適切な治療を行わなければ発症後30日以内に約50%の患者が血栓塞栓症を合併し、約5%の患者が死に至るとされる。静脈血栓症(深部静脈血栓、肺塞栓症)が動脈血栓症(四肢動脈血栓、脳梗塞、心筋梗塞)より多いとされるが、心臓血管外科術後ヘパリン起因性血小板減少症患者では、圧倒的に動脈血栓症合併が多い。また、血液透析や体外循環補助を受けている患者では、回路内凝血の形でヘパリン起因性血小板減少症が疑われることも少なくない。

6. 治療法

ヘパリン起因性血小板減少症治療の原則は、直ちに全てのヘパリン投与を中止することである。ヘパリンフラッシュやヘパリンコーティングカテーテル、回路も中止、除去する必要がある。ただ、へパリン中止しただけでは約50%の患者が血栓塞栓症を合併し、最大20%の患者が死亡にいたるとの報告があり、抗トロンビン薬もしくはXa阻害薬による抗凝固療法が必要となる。ヘパリン起因性血小板減少症を臨床的に疑った時点で、血栓症合併の有無に関わらず直ちに投与を開始する。

7. 研究班

ヘパリン起因性血小板減少症の診断基準確立のための研究班