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呼吸器系疾患分野新生児横隔膜ヘルニア(平成23年度)

しんせいじおうかくまくへるにあ
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1. 概要

新生児横隔膜ヘルニアは、横隔膜の先天的な欠損により、腹腔内臓器が胸腔内へ脱出して生じる先天性疾患である。胎児期から胸腔内に脱出した腹腔内臓器の程度に応じて肺低形成を伴ううえ、出生後には様々の程度の肺高血圧を呈するため、症例による重症度が極めて幅広い。本邦における新生児横隔膜ヘルニアの予後は、近年改善傾向にあるものの、生存率が未だ約80%に留まっている。また、生存例においても、在宅医療を要する長期後遺障害例が15%程度存在する。

2. 疫学

新生児横隔膜ヘルニアの発生頻度は、出生数2,000人〜4,000人あたりに1例と言われている。日本小児外科学会による最新の調査によると、年間発症数は約180例程度と報告されている。

3. 原因

新生児横隔膜ヘルニアの疾患の本態は、横隔膜の先天的な欠損あるいは形成不全である。しかし、横隔膜の欠損とそれに関連した肺低形成および遷延性肺高血圧の病因については、いまだ詳しく解明されていない。多くの症例は単独で発症し、70%が原因の明らかでない特発性の発症例である。約20%程度は他の原因、例えばビタミンA欠乏症との関連性が実験的に示されている。腹腔内の臓器が横隔膜の欠損孔を通じて脱出する時期が、肺の発育における非常に重要な時期と一致するため、腸管などの腹腔内臓器による肺の圧迫によって肺低形成が生じると考えられる。

4. 症状

横隔膜の欠損孔の大きさと、腹腔内臓器が胸腔内に脱出する時期が出生後早期に症状を発症するかどうかの重要な因子である。通常、呼吸困難症状を呈した新生児は、酸素投与とマスクを用いた最初の人工呼吸によって症状は一旦改善するが、これにより胃や腸がガスで膨らみ、肺をより圧迫し、縦隔偏位が進むにつれて酸素化の悪化が招来される。最も重症の症例では、生後数日で死亡する場合もある。しかし、横隔膜の欠損孔の小さい症例では、出生直後に明らかな症状は出ない。

5. 合併症

肺低形成と新生児遷延性肺高血圧症が2大合併症である。横隔膜の欠損は時として、染色体異常に伴うことがあり、8%の症例で、13トリソミー, 18トリソミー、ダウン症候群、ベックウィズ・ヴィードマン症候群、ダニー・ドラッシュ症候群などを合併する。しかし家族性の発生はまれ(2%程度)である。先天性心奇形を合併する症例も時に認められる。長期的な治療成績は生まれ持っての重症度に大きく影響される。肺機能障害、成長発達障害、精神発達遅延、難聴、胃食道逆流症、側弯、漏斗胸などが長期経過観察中に発症すると言われている。

6. 治療法

出生前診断された本症の患児にとっては、正確な診断と重症度の評価、それに続く注意深い周産期管理が重要である。近年ではリスクの高い本症の患児に対しては、高炭酸ガス血症容認、低酸素血症容認の考え方のもとに、高頻度振動換気、一酸化窒素吸入療法、人工肺(ECMO)などの積極的な治療が行われている。欧米においては、胎児治療の臨床応用も試みられつつある。一方で低侵襲手術として一部の症例に鏡視下手術が導入されつつある。

7. 研究班

新生児横隔膜ヘルニアの重症度別治療指針の作成に関する研究班