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奇形症候群分野二分脊椎(平成23年度)

にぶんせきつい
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1. 概要

二分脊椎は神経管閉鎖障害を形成する主要な先天性奇形であり、その疾患特徴は脳神経外科、整形外科、泌尿器科などの集学的治療を要し、終生にわたり治療とリハビリテーションを必要とする点である。1991 年に英国から発表された無作為比較試験により、葉酸サプリメントを内服した妊婦(症例群)では、対照群に比較して神経管閉鎖障害の再発リスクが72%減少することが証明された。2000 年に厚生労働省は妊娠を計画する女性は、妊娠4 週前から妊娠12 週まで葉酸サプリメント400μg/日を内服するよう勧告した。しかし葉酸サプリメントの内服率は低率であり、患者数は全く減少していない。若年女性へ葉酸の重要な役割を妊娠前に伝達し、葉酸サプリメント内服率を高め、二分脊椎の発生率を減少させることが肝要である。

2. 疫学

詳細な疫学調査は、ごく最近に開始されたばかりである。日本産婦人科医会・外表奇形等統計調査の報告によれば、2007年の患児発生頻度は分娩 10,000件あたり4.8であり、その年の出生数は約400名と推測されている。過去30 年間にわたり、患者発生率に減少傾向を認めない(1980 年=2.2/10,000 分娩数、1990 年=3.6;2000=4.8;2007 年=4.8)。

3. 原因

二分脊椎の主要な原因は(1)栄養学的因子(葉酸の摂取量不足)、(2)環境因
子(糖尿病、肥満、てんかん薬の内服、妊娠前期の高熱発作、放射線被爆、ビタミンA の過剰摂取)(3)遺伝子因子と言われている。妊娠前から葉酸サプリメントを充分に内服すると、発生リスクは70~80%低減できるが、残る20~30%の症例は遺伝子異常が関係しており予防が困難である。米国など40 数カ国では、穀類に葉酸の添加が義務化され、添加後の発生率は50%前後減少したと報告されている。しかし本邦では食品への添加には賛同が得られていない。従って葉酸の役割を若年女性へ知らしめ、葉酸サプリメントの内服率を上昇させ、二分脊椎の発生頻度を低下させることが急務である。

4. 症状

脳神経外科領域では、腰仙部の脊髄髄膜瘤を生後2~3日以内に修復し、髄膜炎と神経の機能障害を防止する。90%の症例では水頭症が発生するので、脳室腹腔シャント術が必要である。キアリ奇形を過半数の患者で認め、10%の患者では無呼吸発作、喘鳴、嚥下障害を認める。整形外科領域では、歩行障害・足部の褥創、脊柱側弯・後弯などを認める。泌尿器科領域では、尿失禁、尿路感染症が70~80%の患児に発生する。成人男性の過半数で性機能障害が発生する。これは精巣発育不全および神経障害のために惹起される。小児外科領域では、大便失禁が最大の問題である。軽度から中程度の知能障害が、約半数の患児で発症する。

5. 合併症

水頭症を放置すると、無気力・癲癇発作・知能障害などが発症する。キアリ奇形が高度であれば、誤嚥性肺炎・呼吸不全を惹起し、死亡にいたる。下肢の運動・知覚障害を放置すれば、下肢の変形・歩行障害・転倒・骨折などが発症し、移動能力が大幅に低下する。また背部・臀部・足部の褥創が拡大し、敗血症に罹患することもある。反復性または慢性尿路感染は膀胱尿管逆流を惹起し、長期的には腎機能障害・腎不全に繋がる。成人男性では不妊症が発生する。大便失禁を放置すれば、社会生活への順応能力とADLが大きく損なわれる。

6. 治療法

水頭症は脳室腹腔シャント術で対応する。キアリ奇形による呼吸不全、誤嚥性肺炎等は死亡原因の第1位である。脊髄空洞症があればこれを外科的に治療する。整形外科領域では、補足具・松葉杖を使用し、足関節や股関節の矯正手術、脊柱の変形には手術療法で対応する。泌尿器科的には、清潔間欠導尿(CIC)を幼児期から導入して、抗コリン剤と抗菌剤を処方する。症状が高度であれば、膀胱拡大術と尿失禁防止術(スリング手術)が必要となる。大便失禁には、浣腸・摘便・逆行性洗腸法、虫垂を腹壁へ吻合する順行性浣腸法(ACE)などが採用されている。二分脊椎は出生直後から終生にわたり、治療とリハビリテーションを必要とする。

7. 研究班

研究班 二分脊椎の予防指針作成:二分脊椎の病因探索と葉酸情報伝達システムの研究班