門脈血行異常症に関する調査研究

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この研究班は、食道静脈瘤などの門脈圧亢進症と呼ばれる病態を引き起こす3つの病気について研究しています。すなわち、1) 特発性門脈圧亢進症、2) 肝外門脈閉塞症、3) バッドキアリ症候群の3つの疾患です。

これらの3疾患はいずれも原因がはっきりせず、慢性的に経過する病気です。共通しているのは門脈圧が上昇することです。門脈とは、胃・小腸・大腸・膵臓・脾臓などのおなかの臓器から帰て、肝臓に入って行く静脈のことです。門脈圧が上昇すると、逃げ場を失った血液が、胃の廻りから食道を通って心臓に帰るバイパス、食道静脈瘤ができます。食道静脈瘤が破裂すると、出血して、血を吐いたり便に黒い血となって血液が失われ、致命的になることもあります。

門脈圧が上昇する原因として、特発性門脈圧亢進症では、肝臓の中の細い門脈の枝がつぶれて流れにくくなることが分かって来ました。また肝外門脈閉塞症では、肝臓の入り口の門脈の中に血栓ができて肝臓に血液が流れにくくなります。バッドキアリ症候群では、肝臓の出口の静脈、肝静脈が詰まって、やはり肝臓に血液が流れにくくなります。

これらの血管が詰まる原因として、血液が固まりやすくなることや、自己免疫といって、自分で自分の血管に対する抗体を作って攻撃するなどの原因が分かってきました。

3つの病気はそれぞれ詰まったり流れにくくなる場所が違うために、治療法も異なってきます。共通の病態として、食道静脈瘤の破裂が一番の危険な因子ですが、その治療法は、内視鏡で静脈瘤を縛ったり、静脈瘤の中に血管を詰まらせる硬化剤という薬を内視鏡を見ながら注射するといった、内視鏡治療が行われれます。

特発性門脈圧亢進症や肝外門脈閉塞症は、肝臓が肝硬変や肝がんにならず、食道静脈瘤の出血を予防すれば、長生きすることが分かってきました。バッドキアリ症候群は、肝臓のうっ血が長く続くので、うっ血性肝硬変になったり、肝がんになったりする危険があります。そのため、うっ血を取るような治療法を必要とします。手術で肝臓の手前にシャントを作って血液の逃げ道を作ったり、カテーテルでステントのという逃げ道を作ったりして門脈圧を下げることによって、うっ血を改善することが必要です。

肝硬変になって肝臓の寿命が短いことが予想される場合には、肝移植が考慮されることもあります。

以上簡単ですが、本研究班が研究している3つの病気の、分かってきた原因や治療法について述べました。