深部静脈血栓症(平成21年度)

はいけっせんそくせんしょう、しんぶじょうみゃくけっせんしょう
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1. 概要

下肢および骨盤内などの深部静脈に血栓が生じた状態を深部静脈血栓症という。この深部静脈血栓が遊離して静脈血流によって肺に運ば れ、肺動脈を閉塞することにより呼吸循環障害を生ずる病態を肺血栓塞栓症という。深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症は連続した一つの病態であり、両者をあわせ て「静脈血栓塞栓症」と称す。

2. 疫学

年間診断数  深部静脈血栓症  約14,700人、肺血栓塞栓症  約7,900人

3. 原因の解明

肺血栓塞栓症の原因とは、すなわち深部静脈血栓症の原因である。血液凝固能の亢進、静脈血流のうっ滞、静脈壁の障害の3つの因子が 種々の程度に重なって、深部静脈血栓症を生ずる。先天性凝固異常、手術、出産、外傷、癌、長期臥床などが誘因となるが、先天性凝固異常には未解明の部分が 多い。下腿のひらめ静脈が深部静脈血栓症の発生源となることが多く、無症候性に肺血栓塞栓症を繰り返していることが病理学的に報告されている。

4. 主な症状

深部静脈血栓症では下肢の腫脹、圧痛、発赤などがみられ、肺血栓塞栓症では呼吸困難、胸痛、失神などが認められる。肺血栓塞栓症では時に心停止となり、突然死に至る場合もある。

5. 主な合併症

深部静脈血栓症では静脈弁不全が発生し、慢性的な下腿腫脹や皮膚障害きたす血栓後症候群が生ずることがある。また、肺血栓塞栓症では肺動脈内に血栓塞栓が残存した場合などに、慢性期に肺高血圧症を生ずる場合がある。

6. 主な治療法

深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症の治療は、両者を併せて行う。第一選択治療は抗凝固療法である。重症例には、血栓溶解療法や下大静脈フィルターが用いられる。また、カテーテル的治療や外科的治療が行われる場合もある。

7. 研究班

肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)の院内予防指針策定ならびにその普及と評価に関する研究班