奇形症候群分野|ATR-X(X連鎖αサラセミア・精神遅滞)症候群(平成22年度)

ATR-X(Xれんさαさらせみあ・せいしんちたい)しょうこうぐん
研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

X染色体に局在するATRX遺伝子を責任遺伝子とする、X連鎖精神遅滞症候群の一つ。
男性で発症し、重度の精神遅滞、αサラセミア(HbH病)、特異な顔貌、外性器異常、骨格異常、独特の行動・姿勢異常を特徴とする。
エピジェネティクスを介した遺伝子発現異常の破綻が病態と考えられる。

2. 疫学

日本国内では、約60症例が診断されている。
世界では日本の症例を含め約200症例が診断されている。
発症頻度は出生男児4−5万人に1例、日本国内では年間10名前後の患者が発症していると推定されている。

3. 原因

X染色体上(Xq13.3)に局在するATRX遺伝子が責任遺伝子であ り、クロマチンリモデリング蛋白のSNF2ファミリーに属すATRX蛋白をコードしている。ATRX遺伝子変異による、ATRX蛋白の機能喪失により、エ ピジェネティクスを介した、αグロビンを含む複数の遺伝子の発現調節異常により発症すると推測される。

4. 症状

(1)精神運動発達の遅れ (2)特徴的顔貌 (3)外性器異常  (4)骨格異常 (5)特徴的な行動・姿勢の異常:自分の口に手を入れて嘔吐を誘発、斜め上を見上げ、手のひらを上に向け、顎を突き上げる、あるいは首を しめる仕草を好む (6)自閉症的な症状:視線を合わせにくい,常同運動 (7)消化器系の異常:胃食道逆流、空気嚥下症、イレウス、便秘 (7)検査所 見:αサラセミア(末梢血液のBrilliant Cresyl Blue染色によるゴルフボール様に染色される封入体を含む赤血球の存在)。

5. 合併症

(1)中枢神経系:てんかん、脳構造の異常 (2)腎奇形 (3)心奇形。

6. 治療法

対症的治療が主体となる。

7. 研究班

ATR-X(X連鎖αサラセミア・精神遅滞)症候群の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究班