眼科疾患分野|ペルーシド角膜辺縁変性(平成22年度)

ぺるーしどかくまくへんえんへんせい
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1. 概要

ペルーシド角膜辺縁変性は、角膜下方の周辺部の菲薄化、突出をきたす疾 患で、両眼性に強い不正乱視をきたす。患者は不正乱視のために視力障害を自覚するが、進行例では眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が困難で社会的盲の状態 となる者も少なくない。代表的な角膜菲薄化をきたす疾患である円錐角膜と比べて、病変部が周辺部にあるために、角膜移植などの外科的治療の適応となりにく く、進行例では有効な治療法がない。また、円錐角膜と同様に、軽症例では適切に診断されずに屈折矯正手術を受けてしまい、角膜拡張症のために不可逆性の視 機能低下をきたすことも問題となっている。希少疾患であるために、その実態には不明な点が多く、信頼できる診断基準がないために、正しい治療を受けていな い例が多い。

2. 疫学

本疾患に関する疫学的研究は、本邦、諸外国を含めてこれまでなされてい ない。これには、疾患の希少性と共に診断基準がなく、円錐角膜と混同されやすいことも関連している。患者の概数の基となるデータはないが、角膜専門医の間 では円錐角膜の20-40分の1程度と考えるものが多く、そこから概算すると全国で1,500-3,000名程度ではないかと考えられるが、あくまで類推 の域を出ず、これを裏付けるデータは存在しない。

3. 原因

角膜実質コラーゲンの異常が推測されているが、詳細は不明である。同じく角膜実質の脆弱性を持つ円錐角膜との関連を指摘する報告もある一方、臨床所見の相違を指摘する報告もあり、意見の一致を見ていない。

4. 症状

不正乱視による視力低下をきたす。20歳前後で視力低下を自覚し、徐々に進行する。

5. 合併症

ほとんどの場合、眼局所の異常に留まる。

6. 治療法

軽症では眼鏡による矯正が可能であるが、中等症以降ではハードコンタク トレンズによる矯正が行われる。しかし、角膜形状の不整のためにコンタクトレンズフィッティングが不良で、長時間の装用ができない場合が多い。進行例では 角膜移植などの外科的治療を行うという報告もあるが、角膜中央部に異常が限局する円錐角膜と異なり、角膜周辺部の広い範囲をカバーする必要があるために、 術後拒絶反応のリスクが極めて高く、十分安全で効果的な治療法となりえていない。近年、進行予防を目的としたコラーゲン・クロスリンキングや、角膜実質内 に弧状PMMAリングを挿入する角膜内リング、あるいは角膜熱形成など新しい治療が導入されて散発的に試みられているが、効果や安全性に関するデータはな い。

7. 研究班

ペルーシド角膜辺縁変性の実態調査と診断基準作成 研究班