クロウ・深瀬症候群(指定難病16)
1. クロウ・深瀬症候群とは |
クロウ・深瀬症候群とは 免疫グロブリン を産生する形質細胞の異常が基礎にあり、おそらくこの異常な形質細胞増殖に伴って産生される特殊なタンパク質(血管内皮増殖因子:VEGFと略されます)によって、 末梢神経 障害、手足のむくみ、皮膚の変化(色素沈着、 剛毛 、血管腫)、胸水・腹水、など全身の様々な症状が出現する病気とされています。日本では報告者の名前をとってクロウ・深瀬症候群と呼ばれます。欧米では主な症状の頭文字をとってPOEMS症候群(P:polyneuropathy-多発神経炎、O:organomegaly-臓器腫大、E:endocrinopathy- 内分泌障害、M:M-protein-M蛋白、S:skin changes-皮膚症状)といわれていますが両者は同じ病気です。 |
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか |
それほど頻度の高い病気ではありませんが、厚生労働省の研究班(免疫性神経疾患に関する調査研究班)が2004年に行った調査では、全国に約340名の患者さんがいると推定されています。ただし診断がつかずに見逃されていることが多い可能性も指摘されており、実際の患者数はもう少し多いと推定されます。 |
3. この病気はどのような人に多いのですか |
特定の人が罹りやすいということはありませんが、男性が女性に比べて約2倍多く罹患します。平均発症年齢は40歳代ですが、30歳から80歳代まで幅広い年齢層に発症します。 |
4. この病気の原因はわかっているのですか |
この病気の原因はまだ完全には分かっていませんが、骨髄や一部のリンパ節に発生した形質細胞増殖に伴って分泌される血管内皮増殖因子(VEGF)というタンパク質が症状を起こしていることが推定されています。VEGFは血管の増殖を促進し、また体液の血管外への透過性を 亢進 させることにより、多彩な症状を出すとされています。患者さんの血液中にはVEGFが非常に高い濃度で存在し、病気の活動性とも相関することがわかってきました。 |
5. この病気は遺伝するのですか |
この病気は遺伝しません。 |
6. この病気ではどのような症状がおきますか |
多くの患者さんは末梢神経障害による手や足先のしびれ感や脱力で発症し、この症状が進行するにつれて、皮膚の色素沈着や手足の浮腫(むくみ)が出現してきます。患者さんによっては胸水や腹水の貯留が先に発見されたり、また男性では女性化乳房から発症することがあります。これらの症状は未治療では徐々に進行して行き、次第に様々な症状が加わってきます。診断は末梢神経障害や骨病変の精査、血液検査によるM蛋白の検出や血管内皮増殖因子の高値などに基づいてなされます。 |
7. この病気にはどのような治療法がありますか |
患者数が少ないこともあり、この病気の 標準的治療法 は確立されていません。現状では以下の治療が行われており、新しい治療の試みもなされています: |
8. この病気はどういう経過をたどるのですか |
個々の患者さんによって進行のスピードは異なりますが、未治療の場合には数年の間に末梢神経障害による手足の麻痺が進行すると共に、大量の胸水・腹水が溜まることにより心不全、腎不全に至って亡くなることの多い 重篤 な病気とされています。副腎皮質ホルモンは一時的に有効ですが、最終的には再発を抑えられないとの指摘があります。そのために上記のような化学療法、移植療法、サリドマイドによる治療が長期の寛解を目指す治療法として行 われ始めているのが現状です。 |
9.この病気に関する資料・関連リンク |
POEMS症候群サポートグループ(患者会) |
研究班名 | 神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和2年8月 |