神経系疾患分野|那須ハコラ病(平成22年度)

なすはこらびょう
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1. 概要

那須ハコラ病(Nasu-Hakola disease)は、多発性骨嚢胞による病的骨折と白質脳症による若年性認知症を主徴とし、DAP12(TYROBP)遺伝子またはTREM2遺伝子の変 異を認める常染色体性劣性遺伝性疾患である。1970年代に、那須毅博士とHakola博士により疾患概念が確立され、現在はpolycystic lipomembranous osteodysplasia with sclerosing leukoencephalopathy (PLOSL: OMIM221770)とも呼ばれている。患者は本邦と北欧(フィンランド)に集積し、これまでに国内外で200症例以上の報告がある。

2. 疫学

本研究班が平成21年度に全国の神経内科・精神神経科・整形外科教育研修施設4071カ所を対象に施行したアンケート調査の結果より、本邦における患者数は約200人と推定される。

3. 原因

脳のミクログリアや骨の破骨細胞で発現しているDAP12(TYROBP)遺伝子またはTREM2遺伝子の機能喪失変異により発症する。家族歴が不明確なケースもある。

4. 症状

(1)無症候期(20歳代まで)、(2)骨症状期(20歳代以降):長 幹骨骨端部に好発する多発性骨嚢胞と病的骨折、(3)早期精神神経症状期(30歳代以降):脱抑制・多幸症・人格障害・言語障害などの前頭葉症候・精神症 状・てんかん発作、(4)晩期精神神経症状期(40歳代以降):進行性認知症を呈する。

5. 合併症

20歳代頃から骨折を繰り返す。30歳代頃から精神神経症状を呈して緩徐に進行し、晩期に寝たきり状態となり誤嚥性肺炎を来す。

6. 治療法

現在、原疾患に対しては有効な治療法がなく、対症療法が主体である。骨折に対する整形外科的治療、精神症状に対する抗精神病薬の投与やてんかん発作に対する抗てんかん薬の投与が行われている。

7. 研究班

那須ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究班