Brugada症候群(平成21年度)

ブルガダしょうこうぐん
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1. 概要

遺伝的素因の強い稀な疾患であり、コーカサス人種に比し日本人を始めとするアジア人に多くみられる、突然死を来す予後不良の疾患群 である。成人男性に圧倒的に多くみられ(男女比10:1)、12誘導心電図の胸部V1-V3誘導でCoved型もしくはSaddle Back型ST上昇を示す事が特徴的である。突然死蘇生例や失神などの既往のある群を症候性ブルガダ症候群として扱い、全く症状を有しない群を無症候群性 ブルガダ症候群として考えることが一般的である。

2. 疫学

約500-1,000人

3. 原因の解明

約20%の症例では、SCN5A(Naチャンネル遺伝子)のミューテーションにより発症する可能性が示されており、また突然死の家 族歴を有する症例が約20%に見られ、遺伝的チャンネル病が背景にあると考えられる。右室流出路を中心にした貫壁性の再分極異常がその心電図異常の原因と 考えられ、心室細動の発生についても心外膜側と心内膜側の拡張期の電位差による局所のリエントリー(phase 2 reentry)によると考えられている。

4. 主な症状

特に夜間に突然生じる心停止発作。以前我が国ではぽっくり病として知られていた疾患群である。心電図異常は0.1-0.5%に見ら れる可能性がある。症候性ブルガダ症候群では、突然死が3年で20-30%みられるのに対し、無症候性ブルガダ症候群では心停止発作をきたす頻度は年次 1%未満と考えられている。症候性ブルガダ症候群や家族歴を有する症例では植込み型除細動器(ICD)治療が必須であるが、無症候性ブルガダ症候群では ICDの必要性が少ないとも考えられ、この点からも今回の疫学調査の意義は大きい。

5. 主な合併症

典型的な心電図異常を認めるのみで、特に背景となる疾患や心臓病はなく、特発性心室細動による心停止発作を来たす。約20%に SCN5Aの遺伝子異常が見出され、約20%では家族歴を有する。残る症例では、遺伝子異常や家族歴を有さず、単一の異常を反映した単一の疾患群ではない 可能性も考えられる。いずれにせよ、無症候性ブルガダ症候群における長期にわたる突然死の頻度を正確に把握する必要があり、本研究により真にICDを必要 とする症例の臨床像が明確となる可能性もある。

6. 主な治療法

心停止発作の予防として、シロスタゾール(プレタール)の内服や、キニジンやジソピラミドの少量内服の試みなどがあるが、抗不整脈 薬によりかえって発作が頻発する可能性もあり、慎重な投与を要する。ICD植え込みによる発作時のDCのみが確実な方法であるが、無症候性Brugada 症候群において、真にICD植え込みを要する症例群の同定などについては、いまだ十分に検討されていない。

7. 研究班

心電図健診による長期にわたる疫学調査:Brugada(ブルガダ)症候群の長期予後調査班