Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)(平成21年度)

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1. 概要

BWSは、臍帯ヘルニア(Exomphalos)、巨舌(Macroglossia)、巨体(Giantism)を三主徴とする先 天異常症候群である。症状の頭文字を合わせてEMG症候群ともいわれる。約10%の症例でWilms腫瘍、肝芽種、横紋筋肉腫など胎児性腫瘍が発生する。 Sotos症候群等の過成長を呈する疾患との鑑別が必要。

2. 疫学

本邦における患者数の把握はなされていない

3. 原因の解明

BWSの大部分は孤発例であり、家族例は15%である。BWSの原因遺伝子座は11番染色体短腕15.5領域(11p15.5) で、この領域には多くの刷り込み遺伝子がクラスターを形成して存在する。BWSの原因の約2/3は、11p15.5の刷り込み異常によって生じる。 11p15.5には、2つの刷り込みドメイン、KIP2/LIT1ドメインとIGF2/H19ドメイン、があり、それぞれ刷り込み調節領域により周辺の刷 り込み遺伝子の発現が制御されている。BWSの約30-50%はKIP2/LIT1ドメインのDNA低メチル化によりKIP2(CDKN1C)の発現が低 下し、約5-10%ではIGF2/H19ドメインのDNA高メチル化によりIGF2の発現が上昇していることがわかっているが、これらのメチル化異常が生 じる原因は未解明のままである。約17%に父性ダイソミー(patUPD11)、5-7%でKIP2の遺伝子変異、10%で染色体構造異常が認められる。 約1/3ではこれらの異常は認められない。

4. 主な症状

臍帯ヘルニア(Exomphalos)、巨舌(Macroglossia)、巨体(Giantism)を三主徴である。臍帯ヘルニ アについては、肝臓・腎臓・脾臓・膵臓など臓器の肥大が見られるため、腹腔内に臓器がおさまり切れず、圧出された腸がへその緒に突出し、臍帯ヘルニアとな る。新生児期以降も鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、腹直筋離開などで手術を要することがある。巨舌については、口腔内に収まり切れない巨舌を放置した場合、ほ 乳障害を、長期的には咬合障害・下顎前突を生じる。このような障害が合併する場合には、舌縮小術(舌部分切除術)を要する。巨体については、胎生期から過 成長を示し、胎盤重量増加・羊水過多・臍帯過長が見られる。

5. 主な合併症

三主徴の他に、新生児期の低血糖、耳垂の線状溝、内臓腫大、片側肥大などを伴う。男性では不妊になることがある。また、約10%の患児にWilms腫瘍、肝芽種、横紋筋肉腫など胎児性腫瘍が発生する。

6. 主な治療法

臍帯ヘルニア、巨舌については、必要に応じてヘルニア根治術や舌縮小術などの外科的手術を行う。
低血糖については、50mg/dl以下にならないように6時間毎にモニタリングし、グルコースを補充する。脳障害を生じると長期的加療が必要となる。
胎児性腫瘍については、定期的に超音波、CT、MRI等によるスクリーニングが必要。腫瘍が生じた場合は、化学療法および外科的切除をおこなう。
半身肥大の場合は、脚長の左右差が生じるため脚延長術を施行することもある。

7. 研究班

ゲノム刷り込み疾患Beckwith-Wiedemann症候群の全国調査と遺伝子解析に基づく診断基準の作成班
ゲノムインプリンティング異常症5疾患の実態把握に関する全国多施設共同研究班