脊髄障害性疼痛症候群(平成21年度)

せきずいしょうがいせいとうつうしょうこうぐん
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1. 概要

脊髄障害性疼痛症候群は脊髄障害に起因すると考えられる多彩な痛みであり、通常痛みを起こさない刺激が痛みを引き起こすアロデニア や障害脊髄高位以下の締め付けられるような自発痛などを生ずる。脊髄の障害が引き起こされる後縦靭帯骨化症や脊髄空洞症や脊髄損傷後などに発症し、一部の 薬剤が奏功する症例も存在するが一般に治療抵抗性であるため患者の日常生活を極めて悪化させる要因となる。

2. 疫学

不明

3. 原因

脊髄への圧迫性病変や急性外傷など脊髄の痛覚伝導路の機能に影響を及ぼすと考えられる病態によって痛みが引き起こされる。一方で圧迫の解除などによっては改善しないことが多く、その詳細なメカニズムについては不明な部分が多い。

4. 症状

脊髄の障害が引き起こされた部位以下の自発痛、しびれ感、感覚鈍麻を認める。
障害高位のアロデニア(異痛症): 通常痛みを引き起こさない触覚刺激あるいは冷温刺激で痛みを生ずることがある。
痛覚過敏: 侵害刺激(機械的痛み刺激あるいは温熱痛刺激)によって強い痛みを生じることがある。
MRIによる画像診断では障害部位に圧迫性病変、脊髄空洞症、脊髄内高輝度変化などを認めることが多い。

5. 合併症

脊髄性の運動障害
運動障害に起因する関節拘縮、廃用症候群など
自律神経障害
膀胱直腸障害
反応性うつ状態

6. 治療法

抗てんかん剤、抗うつ剤などの薬物療法が一部有効なことがある。抗てんかん剤はナトリウムチャネルやカルシウムチャネルを阻害する ことで神経の興奮性を抑制することで鎮痛効果が得られると推察される。抗うつ剤の本症候群に対する作用機序は不明であるが、下行性鎮痛抑制系の賦活作用あ るいは抗うつ作用によると考えられる。カウンセリングや痛みに対する生活の指導も一部有効である。

7. 研究班

脊髄障害性疼痛症候群の実態の把握と病態の解明に関する研究班