高グリシン血症(別名、グリシン脳症)(平成21年度)

こうぐりしんけっしょう(べつめい、ぐりしんのうしょう)
研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

脳や肝臓に存在するグリシン開裂酵素系の遺伝的な欠損により、体液中や脳にグリシンが大量に蓄積することにより発症する先天性アミノ酸代謝異常症のひとつである。グリシンは中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシン蓄積が重篤な神経障害をもたらす。

2. 疫学

約100人

3. 原因

グリシン開裂酵素系は複合酵素で、GLDC, AMT, GCSH, DLDの4つの遺伝子にコードされる酵素により構成されている。約6割の症例でGLDC遺伝子に、約2割にAMT遺伝子に変異を認める。GCSH遺伝子変 異は極めて稀。残りの約2割の症例ではいずれの遺伝子にも変異は見出されない。DLD遺伝子変異はLiegh脳症を引き起こすが、高グリシン血症とはなら ない。

4. 症状

重症例は、生後数日以内に筋緊張低下、無呼吸、しゃっくり、昏睡などが始まり、後にけいれん重積となる。人工換気などの治療で新生児期を乗りきると自発呼吸が出てくる。その後、成長は認められるが、精神運動発達の遅れが目立つようになる。
軽症型は新生児期をほぼ無症状に過ごす。乳幼児期にから発達の遅れや筋緊張低下が現れる。成人で診断された例もある。診断の手掛かりとなる特異的な症状を欠くため、多くは未診断のままと考えられる。

5. 合併症

重症例には、脳梁欠損、脳回異常、水頭症などの脳形成異常を合併する。軽症例では、多動、衝動的行動などの注意欠損多動症候群に類似した行動異常を伴う。

6. 治療法

有効な治療は確立していない。体内に蓄積したグリシンの排出目的で安息香酸の大量投与が行われている。神経伝達物質受容体のアンタゴニストであるデキストロメトルファンの投与で、脳波所見や哺乳状況が改善した症例が報告されているが、長期予後に対する効果は不明である。

7. 研究班

高グリシン血症の患者数把握と治療法開発に関する研究班