脊髄髄膜瘤(指定難病118)

せきずいずいまくりゅう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「脊髄髄膜瘤」とはどのような病気ですか

ヒトが母親の胎内で形成されていく過程で、主に腰やお尻の上の皮膚や骨が閉じきれず、脳から続く脊髄と呼ばれる神経も開いたまま体表に出ている状態で、最近では胎児期の超音波検査などによって出生前にもわかるようになってきました。脊髄髄膜瘤は顕在性二分脊椎症や開放性二分脊椎症、脊髄披裂などとも呼ばれます。多くは脳に髄液が貯留する水頭症という病態や脳の一部が脊柱管内に下垂するキアリⅡ型奇形なども伴います。生まれてすぐに感染予防と症状悪化防止のために外科的治療が行われます。症状は程度の差はありますが、生まれたときから足が変形していたり動きや感覚が鈍かったりします。また成長に伴って尿が上手く出なかったり、強い便秘に悩まされたりします。水頭症の程度によっては発達の問題も生じてきます。成長に応じてリハビリテーションや排尿障害に対する間欠的自己導尿など、いろいろな医療的ケアが必要になります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

成人期の患者さんは関東圏や関西圏など首都圏を中心に多く分布していますが、病気を持った赤ちゃんは全国で出生しています。あるデータからは年間500~600名の患者さんが出生している計算になりますが、実数はもう少し少なく、年間200~300名の患者さんが出生していると推測されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

栄養状態の改善や妊娠の可能性がある女性への葉酸の投与などで、世界的には患者さんの数は少なくなってきています。しかし母親が過度な肥満であったり糖尿病を罹患したりしている場合、バルプロ酸やカルバマゼピンのような抗てんかん薬を内服している場合は、子どもがこの病気を持って生まれてくる可能性が高くなり注意が必要です。

4. この病気の原因はわかっているのですか

栄養因子、遺伝因子、環境因子などが複雑に関与して、発生します。妊娠前から葉酸(水溶性ビタミンB9)を十分に内服すると、その60-70%の発生を予防できます。

5. この病気は遺伝するのですか

患者の10-20%の患者では、遺伝することが分かっています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

程度の差はありますが、両足の変形や動きの鈍さ、足やお尻の感覚鈍麻、排尿排便障害が主な症状です。水頭症などの影響でどの程度脳に障害があるかによってことなりますが、知能低下などの発達障害、てんかんも起こります。また感覚の低下のためにお尻や腰の皮膚障害( 褥瘡 )が生じます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

病気を治す根本的な治療法は残念ながらありません。産まれてすぐに感染予防と症状悪化防止を目的として、脊髄髄膜瘤の修復術を行います。また水頭症の程度によって髄液リザーバーや脳室ドレナージの設置、脳室腹腔シャント術を行います。
足の症状に対してはリハビリテーションが中心ですが、変形を直す手術をすることもあります。排尿や排便の問題に対しては、清潔間欠的自己導尿や浣腸などが必要になります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

病気のそれぞれの症状に対して、小児科や脳神経外科、整形外科や形成外科、泌尿器科やリハビリテーション科などを受診しながら、就学や就職に向けてよりよい状態を維持できるよう生涯にわたって経過を診ていきます。患者さんの中には特別支援学校や就労継続支援事業所への就職になることもありますが、大学を卒業し一般就職している患者さんも数多くいます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

足の機能が低下しないように、ストレッチやリハビリテーションを継続することが必要です。
水頭症があり脳室腹腔シャントを設置している場合は、頭痛などシャント機能不全の兆候を見逃さないことが大切です。尿路感染や腎機能障害を来さないために、清潔間欠的自己導尿も継続することが必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

別名:開放性二分脊椎症、顕在性二分脊椎症、脊髄披裂
関連する病名:水頭症、キアリⅡ型奇形

11. この病気に関する資料・関連リンク

「日本二分脊椎症協会(http://sba.jpn.com/)」は患者さんが運営する団体であり、病気、リハビリテーション、就職、結婚、医療、保健などに関する情報を提供しています。「葉酸普及研究会-葉酸は赤ちゃんのビタミン(http://yousan-labo.jp/)」は、葉酸摂取の重要性を啓発しています。「日本二分脊椎・水頭症研究振興財団(https://spinabifida-research.com/)」は、二分脊椎と水頭症の研究を促し、国民の医療向上に寄与する団体です。

 

情報提供者
研究班名 神経変性疾患領域における難病の医療水準の向上や患者のQOL向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)