アッシャー症候群(指定難病303)

あっしゃーしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「アッシャー症候群」とはどのような病気ですか

アッシャー症候群は感音難聴に目の病気( 網膜 色素 変性 症)を伴う疾患です。難聴の程度は軽度から重度まで様々です。難聴は生まれつき(先天性)である場合がほとんどです。網膜色素変性症は10歳ぐらいから発症し、徐々に進行していきます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

調査研究班が実施した調査では、人口10万人あたり約6.7人と推測されております。海外でも人口10万人あたり3.0~6.2人とされており、本邦と同程度の比率と考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

遺伝子の病的バリアント(病気の原因となる遺伝子の塩基配列の違い)が病気の原因ですが、ご両親はアッシャー症候群ではない場合がほとんどです。まれに難聴と網膜色素変性症の原因が異なる場合がありますので、確定診断のためには、耳鼻咽喉科を受診していただき、聴力検査と遺伝学的検査を受けていただく必要があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

現在までに、アッシャー症候群の原因として、現在までに10個の遺伝子(MYO7A,USH1C,CDH23,PCDH15,USH1G,USH2A,ADGRV1(GPR98),WHRN(DFNB31),CLRN1,HARS1)の変異が原因であることが明らかになっています。

5. この病気は遺伝するのですか

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝) と呼ばれる遺伝形式を示すため、患者さんのご両親は発病しませんが、ご兄弟には同じ病気がみられることがあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

症状の程度と発症時期によって3つのタイプに分類されています。目の症状は暗いところでの見え方が悪くなる(夜盲)にはじまり、その後視野が狭くなってきます。
タイプ1:生まれつき重度の難聴がみられます。前庭機能(身体のバランスをとる機能)の障害を伴う場合が多く、目の症状(夜盲)は10歳前後より生じます。
タイプ2:生まれつき高音障害型難聴(高い音ほど聞こえにくい難聴)がみられます。目の症状(夜盲)は思春期以降よりみられることが多いとされています。また前庭機能は正常である場合が多いです
タイプ3:進行性の難聴が特徴です。前庭機能障害の有無や目の症状(夜盲)の発症時期は様々であるとされています。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

現時点では難聴そのものを根本的に治療する有効な治療法はありません。難聴の程度に応じて、補聴器や人工内耳によって聴こえを補う治療が行われております。特に先天性の重度の難聴がみられるタイプ1の場合には補聴器だけでは十分な聴こえを獲得することは困難ですので、早い時期から人工内耳を用いることが望ましいです。また将来的に目の症状(網膜色素変性症)が進行し、社会的失明(見える範囲が狭くなり、光を感じることはできるが文字を読んだり、ものを見たりするのが困難なため社会活動が障害される状態)となる可能性を踏まえ、早い時期から両側に人工内耳を装用し、耳からの情報を最大限に生かすことが重要と考えられます。タイプ2の場合には補聴器により十分な聴こえを獲得できることが多いため、早期から補聴器を装用し聴こえを活用することが重要です。
(網膜色素変性症に対する治療法に関しては別項をご参照ください)

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

タイプ1、タイプ2の場合には生後受けることのできる聴力検査(新生児聴覚スクリーニング検査)によって見つかることが多く、その後の精密検査で難聴の程度が分かります。タイプ1、2の場合、難聴は基本的には進行しないとされますが、中には進行する例も報告されています。タイプ3の難聴は生まれつきではない場合もありますが、徐々に進行するとされています。いずれのタイプでも目の症状(網膜色素変性症)は10歳以降に発症し、徐々に進行することが知られています。また、タイプ1の場合には症状が進行し、社会的失明(見える範囲が狭くなり、光を感じることはできるが文字を読んだり、ものを見たりするのが困難な状態)となるケースもあります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

難聴については、聴こえの程度に応じて補聴器や人工内耳を用いて聴力を補う必要があります。特にタイプ1の場合には言葉を覚えるために早期から人工内耳を用いて聴力をおぎなうことが重要です。また、治療だけではなく、場合によっては言葉のトレーニングが必要になることもあります。(網膜色素変性症に関しては別項をご参照ください)

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

・平成22~24年度厚生労働科学研究補助金(難治性疾患研究事業)
Usher症候群に関する調査研究班

・平成26〜令和3年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
難治性聴覚障害に関する調査研究班

情報提供者
研究班名 難治性聴覚障害に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)