エプスタイン病(指定難病217)
えぷすたいんびょう
- ご家族に同じ病気が認められる場合がありますが、ご家族の中に一人だけということが多く、遺伝は心配しすぎる必要はありません。ただ、症状が無いことも少なくないので、健康診断などの機会に調べてもらうと良いでしょう。多くの場合は心雑音がありますので、検診で見つかることが少なくありません。また、エプスタイン病の母親からは、約2-12%程度に、先天性心疾患の子どもが生まれます。一般的に生まれてくる赤ちゃんの1%は先天性心疾患を持って生まれますので、先天性心疾患を持った母親から先天性心疾患の子どもが生まれる頻度は一般よりもやや高いと考えられます。
エプスタイン病は遺伝性のこともあるのですか。エプスタイン病患者の血縁者は症状がなくても心臓に異常がないか調べた方がよいのでしょうか?
- 症状は非常に多彩で、臨床像も様々です。胎児期に診断される場合もあります。新生児期は、チアノーゼや呼吸の苦しい様子などで気付かれます。乳児期に症状が出現する場合は、心不全で哺乳不良や体重増加不良などを伴うことが多く、また、心雑音で気付かれることもあります。乳児期以降は、軽度のチアノーゼ、運動能力低下のみのこともありますが、無症状の場合も多いです。学童期の場合は、学校検診などで心雑音に気付かれるか、心電図検査でWPW症候群に特徴的な所見を認めて精密検査(心エコー検査など)で診断されることがあります。成人になるにつれ、不整脈、動悸、運動時の息切れ、疲れやすいなどの症状が認められるようになります。運動時にチアノーゼを認める場合もあります。突然死は稀ですが、不整脈、血栓形成によると考えられています。妊娠時は、不整脈、血栓に注意が必要です。
以上の様な症状がある場合には、小児循環器科医や循環器内科医、あるいは成人先天性心疾患の専門の医師に相談してください。
エプスタイン病はどの様な症状が出るのですか?そのような症状があるときは,どの医者にかかれば良いですか。
- 心拡大が軽度で、不整脈も無い場合は、殆どすべての運動に参加できます。階段を上がると少し息切れがある程度の場合は、中等度の強度の運動は可能で、日常生活は、制限はありません。ただ、自分のペースを守って、息切れなどの症状が出る前に休むことも必要です。いずれにせよ競争は避けるのが原則です。抜歯や細菌感染時の際の抗生物質の投与は、脳膿瘍、感染性心内膜炎予防のために重要です。高血圧は三尖弁閉鎖不全を悪化させるので、早期の治療が必要です。また、浮腫を伴うことも少なくないので、塩分を取り過ぎないように注意が必要です。何よりも、長期にわたる疾患であるため、無症状のまま病状が進行していることもあり、専門の施設で定期的に検診を受けることが大切です。
エプスタイン病と診断されました。日常生活で気をつけることはありますか?
- この病気は公費負担の対象疾患です。公費負担の対象となるには認定基準があります。
エプスタイン病と診断されると医療費が免除されるのですか?
- 胎児あるいは新生児期にすでに発症している場合は、手術を行いますが、手術後死亡することも少なくありません。乳児から小児期にはじめて診断される場合は、無症状で成人となる場合も少なくありません。また、健康診断などで思春期から成人期にはじめて診断される場合の予後は良好です。手術せずに70才や80才台まで到達できることもあります。しかし、いずれの場合にもきちんと定期検診を受けて、病状の進行がないか、何らかの治療が必要ではないか、どういう状況になれば緊急で受診しなければならないのか、普段からよく相談しておく必要があります。
一方手術後の経過ですが、新生児期の手術の場合は、現在でも手術死亡率は高いです。小児期以降の手術成績は向上していて,手術死亡は、わずかです。また、成人期手術では、手術死亡は殆ど無く、手術後80%以上は長期間の生存をえられています。
エプスタイン病は、長く生きられるのでしょうか。
- 症状が無い場合は、外来での経過観察のみの場合が少なくありません。経年的に不整脈や息切れなどの心不全の症状を伴うようになると治療が必要です。また、症状がなくても、心臓が大きくなってきたり、チアノーゼが強くなったりした場合は、治療を行います。治療には、内科的な治療法と外科的な治療法があります。不整脈や心不全などがある場合には、内科的な治療を行いますが、生まれつきの三尖弁の形態異常ですので、基本的には、心臓外科治療が最終的な治療法となります。
エプスタイン病は治療しないといけないのでしょうか。また、治療が必要ならば、どのような治療を受ければ良いのでしょうか。
- 合併異常がなく成人期まで未手術で無症状に経過している患者さんや、過去にコーン法やカルポンティア法による三尖弁形成術を行い、術後良好に経過している患者さんでは、妊娠・出産は注意深い観察のもと可能です。ただし、妊娠前にこれらの合併異常の有無と程度を精査する必要があります。主治医及び成人先天性心疾患専門医とよく話し合ってください。
一方、未手術もしくは三尖弁形成術後であっても、妊娠前に高度な三尖弁閉鎖不全による右心室および右心房の拡大と機能低下を伴う患者さんでは、妊娠・出産は母体にも胎児にも危険を伴います。妊娠前に精密検査を受けるとともに、最終的な妊娠・出産の可否については、検査結果をもとに、主治医ならびに成人先天性心疾患専門医と十分に話し合って決定してください。
妊娠、出産は大丈夫でしょうか?
関連ホームページのご紹介
① 小児・成育循環器学(改訂第2版).日本小児循環器学会編集. 診断と治療社, 2024.
② 日本成人先天性心疾患学会ホームページ総合・連携認定施設一覧
https://www.jsachd.org/specialist/list-facility/
③ 成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/08/JCS2017_ichida_h.pdf
④ 先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_Yasukochi.pdf
⑤ 心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/06/JCS2018_akagi_ikeda.pdf
⑥ 先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン(2022年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Ohuchi_Kawada.pdf
研究班名 | 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上、円滑な移行医療、成人期以降の予後改善を目指した総合的研究班 研究班名簿 |
---|---|
情報更新日 | 令和6年11月(名簿更新:令和6年7月) |