グルコーストランスポーター1欠損症(指定難病248)

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(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

グルコーストランスポーター1欠損症の疑いと言われました。どのようにして診断されるのでしょうか?

おそらく、神経系の症状にグルコーストランスポーター1欠損症に特徴的な所見があったのではないかと思います。グルコーストランスポーター1欠損症では、まず、髄液検査で、髄液のグルコース(髄液糖)濃度が低いことを確認し、最終的には遺伝子検査で診断が確定します。髄液は、脳や脊髄内を循環している液体です。患者さんに横向きに寝てもらって、腰のあたりの背骨のところで、骨と骨の間に針を刺して、採取します。小さい子どもや、動いてしまう患者さんの場合は、安全・確実に検査を行うために、検査の際にお薬を使って眠ってもらうこともあります。
遺伝子検査は、通常の採血で可能です。この病気の遺伝子検査は、2020年4月から 保険適用 となっています。遺伝子検査で変異が見つかれば、確定診断となります。ただ、現在の遺伝子検査は、完璧ではなく、典型的な患者さんでも、遺伝子検査で変異が見つからないこともあります。遺伝子検査で変異が見つからなくても、一定の条件を満たした場合には、グルコーストランスポーター1欠損症と診断できます。

家族も遺伝子検査を受けた方がよいでしょうか?

グルコーストランスポーター1欠損症では、親には変異はなく、患者さんにおいて新しく発生した変異であることが多いです。しかし、家族の中で、同じ変異を受け継いでいる場合(家族例と呼びます)が10%ほどあります。気になる場合には、ご本人が遺伝子検査を受ける際に、遺伝専門医に相談してみてください。

ケトン食療法で何が良くなるのですか?

治療が開始されれば、発作性の症状がなくなり、運動障害などの症状も改善し、生活の質が高まります。本人もそれが理解でき、体が動き易くなるだけでなく、意欲が高まったり、物覚えもよくなったりするようで、いろいろと挑戦するようになり、その結果できることが増えていきます。

抗てんかん薬は継続すべきですか?

年齢で発作のタイプが変わることもあり、発作のタイプにあった治療薬が選択されます。ケトン食療法後、抗てんかん薬を中止できている人もいます。少なくとも、内服しているお薬の数を減らすことはできているようです。

ケトン食療法を子どもが嫌がるのでは?

普通食をこれまで食べてこられたお子さんではそのようなことが心配されましたが、自分の能力を高める治療と理解できるお子さんが多いようで、意外と受け入れはよいようです。しかし、症状の軽いお子さんでは、症状の改善が軽微だと治療継続にメリットを感じることができず、食べさせることに苦労しているご家庭もあるようです。まずは栄養士に相談し、献立の工夫を助言してもらうと良いのですが、それでもだめな場合は主治医と相談してください。

体調不良時のケトン食療法はどうしたらよいですか?

口からの摂取が可能な限りは継続します。しかし、点滴は糖分が入っていない輸液製剤を用います。食欲がない時や低血糖症状が現れた場合は、一時的に糖分の入った輸液製剤でも構いません。災害や食事を作るご家族の体調不良などでケトン食を用意できない時には、一時的に中断することもやむをえません。その際は、てんかん発作が現れたり、ふらつきなどにより転びやすくなったりする危険がありますので注意しましょう。

命に関わる病気ですか?

てんかん発作も重症化することはなく、その他にも生命に影響を与える合併症もなく、寿命が極端に短い病気でもありません。てんかん発作はむしろ成人期以降は軽快する傾向にあります。

成人期の治療は?

現時点では思春期以降もケトン食療法を継続した方がよいと考えられています。軽症例ではそのまま継続するか、成人期診断例では新たに開始するかは、主治医と相談し、利益・不利益を考えて個別に検討していくことになります。

何か新しい治療法はないのですか?

GLUT1欠損症モデルマウスに対しての遺伝子治療の有効性が報告され、現在治験開始に向けて準備が進んでいます。

 

情報提供者
研究班名 新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症の成人期にいたる診療体制構築と提供に関する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和5年6月)