結節性硬化症(指定難病158)

けっせつせいこうかしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

この病気に対してどのような医療機関を受診したらいいですか?

現在日本には、結節性硬化症に対する専門的な連携診療を実践している医療機関が37施設ほどあります。(一覧表は日本結節性硬化症学会のホームページの【専門的な臨床医リスト】をご参照ください。)これらの医療機関を受診し、包括的な診療を受けられることを勧めます。また地元のかかりつけ医へ定期的に通院し、年に1、2回結節性硬化症専門医療機関を受診することもできます。
なお、結節性硬化症専門医療機関を受診する際は、予めかかりつけ医から診療情報提供書をもらっておき、それを持参してください。

てんかん発作の回数や病状を結節性硬化症専門医療機関の医師と共有したい時はどうしたらいいですか?

日本結節性硬化症学会では患者レジストリシステム(JTSRIM)を構築し、維持してまいりましたが、現在その運用を休止しております。その代替として、患者さんのデータ管理には、KNOCK ON THE DDOR社が無償提供するnanacara(ナナカラhttps://nanacara.jp/)アプリをご利用いただくことを推奨しております。このアプリに登録した情報を結節性硬化症専門医療機関の医師に提示することにより、共有することができます。さらにデータを蓄積することにより、過去のデータと比較することもできます。

この病気のことを通っている学校へ伝えた方がいいですか?

結節性硬化症に伴うてんかん発作があり、薬を服用している場合、学校にその旨を伝えておいた方がいいでしょう。また学校内でてんかん発作が出現した際の対処法についても、事前に連絡しておくと安心です。
一方、結節性硬化症と診断されても、症状がほとんどなければ、学校へ伝えなくても大丈夫です。しかし学校の先生にこの病気のことを伝えておくことで、安全に配慮してもらえたり、適切なサポートを受けられるなど、患者さんのメリットが高い場合には伝えるのがよいでしょう。

この病気は遺伝病と言われましたが、私たち両親には異常がないのに、どうしてこどもが発病したのですか?

結節性硬化症は顕性遺伝(優性遺伝)の病気です。顕性遺伝(優性遺伝)の病気は1対の遺伝子の1つに変異がおこると発病します。結節性硬化症の患者さんの場合は染色体9番のTSC1遺伝子、または染色体16番のTSC2遺伝子の変異によっておこります。
患者さんで遺伝子を調べるとそれぞれ1対あるTSC1またはTSC2遺伝子の2本のうち1つが変異をおこしているか、なくなっています。結節性硬化症の患者さんの精子(または卵子)には、1対の遺伝子のうち、正常な遺伝子か変異遺伝子が1つのみが配分され、精子(卵子)の持つ遺伝子は正常な遺伝子か変異がある遺伝子かどちらか1つです。変異がある遺伝子を持つ精子(卵子)が授精する確率は1/2(50%)になります。言いかえれば、お父さんまたはお母さんが結節性硬化症の場合、子どもの2人に1人が結節性硬化症になります。
ところが、患者さんのご両親に結節性硬化症の症状が見つからない場合が約6割あります。これは、精子(卵子)ができて受精卵となるまでの過程のどこかで、TSC1またはTSC2遺伝子に新しい変化(突然変異)がおこったと考えられます。この場合、変異がある遺伝子を持った精子(卵子)の数は、半分よりははるかに少ないと考えられるので、次に生まれる子どもさんが結節性硬化症になる確率は、ご両親のいずれかが結節性硬化症の場合よりはるかに低くなります。

私は結節性硬化症と診断されています。結婚したい相手がいるのですが、相手の方にどういう風に話したらいいですか? 子どもは産めますか?

ご質問に対してはいくつかの問題があります。
第1には、自分自身が結節性硬化症についてよく理解し、知的障害のないあるいは軽い患者さんは、健康管理で注意するべき点をよく理解し、定期的な健診を受ければ、普通に社会生活が出来ることが多いことを知ってください。てんかんがある場合は、てんかんの薬を正しく服用し、発作がおこらないよう規則正しい生活を心がけ、自分自身が自信を持つことが大切です。顔にボツボツがあって小学校、中学校をつらい思いで過ごしてきた方もおられますが、高校、大学あるいは社会生活を送るようになって、健康なひとよりはるかにしっかりしたすばらしい人間観、人生観を持つようになったひとを何人も知っています。あなたが好きになった相手にも結節性硬化症について、てんかんについて正しく理解してもらう様にするのが良いと思います。
第2には、子どもができた時、おおよそ2人に1人は同じ病気になります。問題は子どもが病気になった場合に、親とおなじような症状の子ができるかどうかです。てんかんも知的障害もなく、顔の血管線維腫だけを持つ方から、親と同じように知的障害やてんかんのない子どもが出来ることは良くあります。しかしながら、親にてんかんや知的障害がなくても、子どもに重度の知的障害がおこる場合もあります。あるいは、軽症の親から、軽症の子どもと重度の知能障害を伴った兄弟姉妹ができる場合もあります。残念ながら現時点では、ご両親を診察・検査して、生まれるこどもの症状を予測することはできません。2人に1人はこの病気が遺伝すること、病気が遺伝したときには、親にはなくとも子どもにてんかんや知的障害を合併する可能性もあります。この点は十分に理解してください。現在、結節性硬化症の研究が進んでおり、お母さんのお腹の中にいる時に診断して、てんかんや知的障害を軽くする治療ができる時も来ると考えています。
第3には、現在抗てんかん薬を服用されている場合は抗てんかん薬の影響も考えないといけません。父親が抗てんかん薬を飲んでいる場合は、問題が少ないのですが、母親が抗てんかん薬を飲んでいる場合、血液から抗てんかん薬が胎児に移行し、胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。たくさんの種類の薬を服用している場合は、主治医の先生とよく相談して、可能な範囲で胎児に影響の少ない抗てんかん薬に変更することも必要です。

この病気についての説明や遺伝の相談、治療などをやっているところがありますか?

最近は多くの病院で遺伝相談などを行う部門を設置しております。結節性硬化症だけではなくさまざまな遺伝性の疾患を対象にしています。例えば、「子どもに遺伝する確率はどのくらいでしょうか?」とか、「遺伝子検査をしてくれるところはありますか?」「胎児診断はできますか?」などの遺伝を中心とした病気の相談であればこういったところで相談することができます。通常、臨床遺伝の専門医、病気の専門医、遺伝病専門のカウンセラーなど3〜4人がひと組で1時間から1時間半の診察を行います。保険適応ではないところが多いと思います。したがって病気の治療や検査はいたしません。もし結節性硬化症の病気についての診察や治療も受けたいというのであれば、前述の専門的な連携診療を行っているところを受診されるのが良いかと思います。もちろん遺伝相談を詳しく受けた上で、連携診療を受けることも可能です。両方の部門が揃っているところでは、情報は共有されます。専門的な連携診療がない病院でも、大学病院やある程度以上の市中病院ではほとんど遺伝相談の部門を備えていると思いますので、相談しやすいかもしれません。


関連ホームページのご紹介

日本結節性硬化症学会HP http://jstsc.kenkyuukai.jp/information/

 

情報提供者
研究班名 神経皮膚症候群および色素性乾皮症・ポルフィリン症の学際的診療体制に基づく医療最適化と患者QOL向上のための研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年11月)