慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー(指定難病14)

まんせいえんしょうせいだつずいせいたはつしんけいえん/たそうせいうんどうニューロパチー
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチーとは

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: CIDP)とは、2ヶ月以上にわたり進行性または再発性の経過で、四肢の筋力低下やしびれ感をきたす 末梢神経 の疾患(神経炎)です。類似の症状をきたす疾患として、ギラン・バレー症候群(GBS)が挙げられます。大きな違いは進行の長さです。GBSでは4週間以内に症状はピークを迎え、その後は再発することはごく稀です。一方、CIDPは2ヶ月以上進行します。治療後も再発と 寛解 を繰り返したり、慢性に進行したりすることがあります。
CIDPで損傷される末梢神経は主に髄鞘(ミエリン)です。神経を電線にたとえると電線そのものが銅線、それを覆う絶縁体であるビニール膜が髄鞘にあたります。CIDPの特徴はこの髄鞘が障害される脱髄と呼ばれる現象です。脱髄により、神経の情報が伝わりにくくなったり、誤った情報が伝わったりすることで、力の入りにくさやしびれなどの症状が出ます。損傷の原因はいまのところ自分の髄鞘を標的として攻撃する免疫的な作用( 炎症 )が推測されています。
多巣性運動ニューロパチー(multifocal motor neuropathy:MMN)とは、慢性に運動神経の脱髄が生じる末梢神経の疾患(神経炎)です。手の使いづらさなどから始まることが多くあります。感覚神経の症状であるしびれや感覚に鈍さなどはありません。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

令和2年度の医療受給者証保持者数は約5,100人です。

3. この病気はどのような人に多いのですか

いままでの疫学的な検討では、男性に若干多い傾向が報告されており、発症年齢は2~70歳までとかなり広い年齢層にまたがることが知られています。

4. この病気の原因はわかっているのですか

発症の原因はまだはっきりしていません。自己の末梢神経、とくに髄鞘を標的に攻撃してしまう免疫異常が強く推定されますが、そのメカニズムの詳細は分かっていません。

5. この病気は遺伝するのですか

このご病気が親から子の世代へ遺伝したとする報告はいままでありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

CIDPでは、運動神経や感覚神経の障害により、洗髪の際に腕が上がらない、箸が使いづらい、などの症状や、足がしびれる、スリッパが脱げやすい、歩きにくいなどの症状がおこります。このような症状は治療が効いて改善しても再発を繰り返すことがあります(再発寛解性)。また、徐々に障害が蓄積して、四肢の筋肉が痩せてくる(筋萎縮)ことがあります。その場合には杖や車椅子での移動が必要となる場合もあります。
MMNでは、運動神経の障害により、箸が使いづらい、腕が挙がらないなどの症状や、スリッパが脱げやすい、歩きにくいなどの症状がおこります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

慢性炎症性脱髄性多発神経炎では、ステロイド療法、免疫グロブリン療法、血液浄化療法が行われます。
多巣性運動ニューロパチーでは免疫グロブリン療法が行われます。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

慢性炎症性脱髄性多発神経炎、多巣性運動ニューロパチーとも、多くの患者さんで継続的な治療が必要になります。多巣性運動ニューロパチーは経過とともに、筋肉のやせが見られます。

9. 本邦におけるCIDPの臨床像と現状の紹介

[難治性ニューロパチーの病態に基づく新規治療法の開発]研究班の報告より
(全国調査による横断的解析)
全国調査(4357医療施設を対象としたアンケート調査)による横断的解析から得られた330症例をもとに、本邦におけるCIDP症例の現状を紹介する。
CIDPの平均発症年齢は53.9±19.4歳、平均罹病期間は80.8±82.0ヶ月(中央値56.0ヶ月)と一部に長期罹病症例の存在が報告されている。病型別では、発症から12ヶ月以上経過してもはっきりしたピークを示さない慢性進行型が23.8%を占め、残りは単相型(再発なし)あるいは再発型を示した。なお再発型の平均再発回数は約2回であった。臨床症状の解析では、運動感覚型が最も多く(60.5%)、感覚運動型(27.9%)、純粋運動型(8.6%)、純粋感覚型(3.0%)であった。重症度では、上肢ではボタンの開け閉めなどの巧緻運動レベルの障害(31.2%)が最も多く、下肢ではなんらかの歩行障害を認めるが独歩が可能なレベルの障害(35.2%)が最も多い。筋萎縮は41.2%に認め、その分布は上下肢(44.2%)、下肢のみ(25.2%)、上肢のみ(19.7%)が多くを占め、体幹(8.2%)や顔面(2.7%)に認める症例は少数であった。治療内容の解析では、IVIg単独(24.6%)または他の治療法との併用療法(58.0%)が選択されており、副腎皮質ステロイド療法の単独治療は13.6%であった。このことから、本邦ではIVIg療法がCIDPにおける治療の第一選択となっていると言える。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

情報提供者
研究班名 神経免疫疾患のエビデンスに基づく診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和4年7月)