ブラウ症候群(指定難病110)

ぶらうしょうこうぐん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
本症は、NOD2遺伝子の変異により常染色体優性遺伝形式にて発症する全身性肉芽腫性疾患である。多くはNOD2遺伝子のexon3(NOD領域)に変異を認め、in vitroにおいてNF-κ Bの自発的な転写亢進を導く機能亢進変異である。優性遺伝であるものの、家族歴のない弧発例も認められる。皮膚症状・関節症状・眼症状を3主徴とするが、多くの場合症状はこの順に出現し、3主徴全てが出揃うには時間がかかる。罹患部位の組織学的検査では肉芽腫(非乾酪性、類上皮細胞性)を認める。
 
2.原因
ブラウ症候群は、2001年に細胞内で微生物特異的な配列を認識するNOD2の機能亢進変異により発症することが明らかにされた。しかし、NOD2の遺伝子異常によってNF-κ Bの転写亢進が誘導されるものの、なぜ肉芽腫に結びつくのかは依然として不明である。
 
3.症状
多くは4歳以前に発症する。皮疹(紅潮を伴った充実性丘疹)、関節症状(腱鞘炎)、眼症状(病変は全眼球性に及ぶ)を3主徴とするが、これら3主徴がすべて出揃うには時間がかかる。組織学的にはいずれも非乾酪性巨細胞性肉芽腫を特徴とする。成人のサルコイドーシスに特徴的とされる肺門リンパ節腫脹は認めない。
4.治療法
確立した治療法は現時点ではなく、治療は症例ごとに対症的に行われているのが現状である。非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)は発熱、疼痛の緩和に一定の効果が期待されるが、病態の改善にはつながらない。ステロイド内服は弛張熱や眼病変を認める症例に用いられる。眼病変の急激な進行時においてステロイド大量投与が行われる場合もある。継続投与は副作用の観点から勧められていない。その他の治療として、メトトレキセートは炎症の軽減に一定の効果があると報告されている。また、生物学的製剤としてadalimumabやinfliximabにおいて症状の寛解が得られたとの報告が認められている。サリドマイドは発熱や眼病変に対する有効性が症例報告レベルで認められている。
 
5.予後
関節症状は、進行に伴い脱臼や関節拘縮を来す。眼症状の進行に伴い、失明を来す。これらの結果、患者の QOLは著しく障害される。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
100人未満(研究班による)
2.発病の機構
不明(NOD2遺伝子変異が関与しているが、なぜ肉芽腫に結びつくのかは依然として不明。)
3.効果的な治療方法
未確立(根本的治療法なし。)
4.長期の療養
必要(進行性である。)
5.診断基準
あり(研究班による診断基準)
6.重症度分類
研究班作成の重症度分類を用い、重症例を対象とする。
 
○ 情報提供元
「自己炎症疾患とその類縁疾患に対する新規診療基盤の確立班」
研究代表者 京都大学大学院医学研究科発達小児科学 教授 平家俊男
 
 
 
<診断基準>
「確定例」「組織学的診断例」「臨床的診断例」を対象とする。
 
NOD2変異に関連した全身性炎症性肉芽腫性疾患 (ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス)の診断基準
○ 本症は、NOD2遺伝子の変異を背景として全身に肉芽種性病変を来す疾患である。
a) NOD2遺伝子に変異を認める。多くはNOD2遺伝子のexon 3(NOD領域)に変異を認め、in vitroにおいてNF-κ Bの自発的な転写亢進を導く機能獲得型の変異である。また、家族歴のある者は常染色体優性遺伝形式をとるが、家族歴のない弧発例も認められる(ただし、この場合、発端者となり常染色体優性遺伝形式で遺伝する。)。
b) 罹患部位の組織学的検査では、肉芽種を呈する。
→下記の臨床症状のいずれかに加えて、a) を認めるものを「確定例」、b) を認めるものを「組織学的診断例」とする。
 
○ 皮膚症状、関節症状、眼症状が3主徴である。
1) 皮膚症状
 充実性の丘疹。痒みなどの自覚症状は殆どない。ときに潮紅し、あるいは乾燥する。
 結節性紅斑
(ステロイド外用に対する反応性は乏しい。ときに数か月の単位で自然寛解と増悪を繰り返す。)
2) 関節症状
 関節背面が無痛性に嚢腫状に腫脹する。
 手指、足趾がソーセージ様に腫脹する。
(レントゲン検査では骨破壊は認めない。腫脹による運動制限のため、痛みは伴わず、他動は制限されない。ただし、進行例では関節の変形や脱臼、拘縮を来す。)
3) 眼症状
 ブドウ膜炎
 虹彩後癒着、結膜炎、網膜炎、視神経萎縮など病変は全眼球性に及ぶ。
(進行例では、失明する。)
 
→ 上記の1)、2)、3) の小項目に挙げた臨床症状の少なくとも1つを3項目共に認めるものの、遺伝子検査や病理組織検査で所見がないもの、あるいは未検査のものを「臨床的診断例」とする。なお、その際には診断の参考項目も参照する。
 
○ 診断の参考項目
 成人のサルコイドーシスに特徴的な両側肺門部リンパ節主徴は原則として認めない(ただし、肺病変の存在を否定するものではない。)。
 多くの症例では、4歳以前に何らかの臨床症状が認められる。BCG接種が臨床症状出現の契機となることがある。
 高熱や弛張熱を認めることがある。
 眼症状の出現までには時間がかかることから、3主徴が揃うまで漫然と経過をみるのではなく、視力予後の改善のためには皮膚症状・関節症状が出現した段階で、組織診断あるいは遺伝子診断を考慮することが望ましい。
 
 
<重症度分類>
重症例を対象とする。
 
重症例の定義:
・発熱等の全身性の炎症症状
・進行性の関節症状
・眼病変を認めるため副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤、生物学的製剤の投与を要する症例
のいずれかを満たすもの。
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

本疾患の関連資料・リンク

自己炎症性疾患サイト
http://aid.kazusa.or.jp/2013/disease/blau

文献
1) Miceli-Richard C, Lesage S, Rybojad M, et al. CARD15 mutations in Blau syndrome. Nat Genet. 2001; 29: 19-20.
2) Kanazawa N, Okafuji I, Kambe N, et al. Early-onset sarcoidosis and CARD15 mutations with constitutive nuclear factor-kappaB activation: common genetic etiology with Blau syndrome. Blood. 2005; 105: 1195-7
3) McDonald C, Inohara N, Nuñez G. Peptidoglycan signaling in innate immunity and inflammatory disease. J Biol Chem. 2005; 280: 20177-80
4) Okafuji I, Nishikomori R, Kanazawa N, et al. Role of the NOD2 genotype in the clinical phenotype of Blau syndrome and early-onset sarcoidosis. Arthritis Rheum. 2009; 60: 242-50.
5) Ikeda K, Kambe N, Takei S, et al. Ultrasonographic assessment reveals detailed distribution of synovial inflammation in Blau syndrome. Arthritis Res Ther. 2014; 16: R89.


情報提供者
研究班名自己炎症性疾患とその類縁疾患の全国診療体制整備、重症度分類、診療ガイドライン確立に関する研究班
研究班名簿 
情報更新日令和元年6月