中枢性摂食異常症に関する調査研究

一覧へ戻る

1. 研究班の紹介

本研究班は、中枢性摂食異常症(神経性食欲不振症、神経性過食症)の病因・病態に関する基礎研究と臨床研究に従事する全国の専門家により構成されており、臨床の現場において役に立つ有効な予防法と治療法の開発を目指しています。本症の病因・病態の解明とともに、科学的エビデンスに立脚した新しい治療薬の開発、学校現場における早期発見の手引きと対応のためのガイドラインの作成、患者家族を対象とした心理教育方法の開発・普及、全国横断型の摂食障害のプライマリケアを援助する基幹医療施設のネットワーク形成などにより、難治性疾患としての中枢性摂食異常症の克服を目指しています。

2. これまでの主な研究成果の概要

●神経性食欲不振症患者の新しい治療薬としてのグレリン

1999年に本研究班の分担研究者の寒川・児島らが発見したグレリンは強力な食欲亢進作用を有しています。本研究班では、神経性食欲不振症において新しい治療薬としてのグレリンの可能性を明らかにしました。現在、有効性を検証するための臨床治験が進行中です。グレリンは食欲調節因子を用いた初めての神経性食欲不振症に対する治療薬です。

●「神経性食欲不振症のプライマリケアのためのガイドライン(2007年)」の作成

神経性食欲不振症患者は年々増加しており、本症患者の約7割が最初に一般医を受診します。本研究班では、一般医が本症の重症度に応じてプライマリケアを適切かつ迅速に施行し、専門医と連携する上で必要な留意点をまとめたガイドラインを作成しました。

●患者家族のための心理教育用のDVDの作成

神経性食欲不振症の効果的な治療のためには、家族が疾患を正しく理解して適切に対応することが重要です。本研究班では、家族の心理教育の内容をまとめた「拒食症の家族教室vol. 1理解編」と患者への家族の具体的な対処法をまとめた「拒食症の家族教室vol. 2対処編」のDVD教材を作成しました。

3. 研究班としてトピックス的な話題など

近年、わが国における若年女性の理想体重に対する認識は大きく変化しており、若年者に多い中枢性摂食異常症の患者と予備軍は確実に増加しています。特に、発症の低年齢化と慢性患者の高齢化が進んでおり、合併症(骨粗鬆症、低身長や性腺機能低下症・不妊症)が増加しています。又、中枢性摂食異常症のうちやせを主症状とする神経性食欲不振症では死亡率が5~20%に達しており、他の精神疾患より高くなっています。しかしながら、現状では、本症は心療内科的な対応しかできない難治性疾患であり、特効的な薬物はありません。本症の性質上、学校現場における早期発見と予防法の確立と患者家族の理解と適切な援助が重要です。

平成21年度には本研究班において、本症の早期発見と予防のために、全国横断型の中枢性摂食異常症のプライマリケアを援助する基幹医療施設のネットワーク形成に向けたワーキンググループを立ち上げました。このワーキンググループを活用して大規模疫学調査のため予備調査を計画しており、わが国における本症の実態把握に貢献したいと考えています。

4. 参考ホームページ

難病情報センター
中枢性摂食異常症