小眼球(症)(平成21年度)

しょうがんきゅう(しょう)
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1. 概要

先天的に眼球全体が小さい状態で、角膜、水晶体、網膜硝子体などの発生異常に伴って眼球の発達が障害されて起こるものが多い。臨床 的無眼球、極小眼球という重度のものから軽度の小眼球まで、さまざまな程度がある。小眼球の大きさの定義として、我が国では、正常の眼球容積の2/3以 下、すなわち眼軸長が年齢の正常の約0.87以下とする馬嶋の基準が用いられることが多い。しかし原因や病態に基づく診断基準は未確立である。

2. 疫学

約12,000人

3. 原因の解明

一部で原因遺伝子が発見されているものもあるが(PAX6, RX, SOX2, EYA1など初期発生に関与する転写因子遺伝子)、多くは原因が明らかにされていない。子宮内感染、薬物、アルコールなど初期発生における環境因子が原因 となることもある。発症機序として初期眼球・眼杯形成障害、前眼部間葉細胞の発生異常、水晶体発生異常、硝子体形成異常、胎生裂閉鎖不全などが挙げられる が十分に解明されておらず、効果的な治療法は確立していない。

4. 主な症状

小児期より生涯にわたり重篤な視力障害をきたす。

5. 主な合併症

角膜、水晶体、網膜硝子体、視神経に至るまで多種多様な先天眼異常を合併し、その程度もさまざまである。染色体異常、全身疾患の合 併も高頻度である。また小児期から成人期にいたるまで強度屈折異常、白内障、緑内障、網膜剥離などの眼合併症を高頻度に生じる。無眼球・極小眼球では眼 窩・顔面骨の発育不全をきたす。

6. 主な治療法

強度屈折異常に対し矯正眼鏡等の常用による弱視治療を行う。白内障、緑内障などを伴う小眼球に対しては、早期に診断して手術と適切 な術後管理、訓練を行い残存視力の向上を図る。しかし治療法がなく視力がほとんど得られない例では、乳幼児期からロービジョンケアが必要である。また重症 例では義眼による整容治療を要する。残存視力の保持のためには生涯にわたる合併症の管理が必要である。

7. 研究班

小眼球による視覚障害の調査研究班