奇形症候群分野|PCS/MVA症候群(染色分体早期解離/多彩異数性モザイク症候群)(平成24年度)

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1. 概要

常染色体劣性の染色体不安定症候群。発育遅滞と小頭症、高発がん性を伴い、患者細胞は染色分体早期解離(PCS)と多彩異数性モザイク(MVA)を高頻度に示す。

2. 疫学

15−20人。発生頻度は100万人に1人、保因者頻度は200-300人に1人と推定。

3. 原因

一対のBUBR1遺伝子の一方がタンパク質を作らない変異で、他方がタンパク質の機能低下を来す変異(またはタンパク質発現が低下するが変異が見つからない)。染色分体間の接着を司るコヒーシンの機能低下により細胞分裂中期にPCSを来す。紡錘体チェックポイントの機能不全のために紡錘体の動原体接続に異常が生じてもチェックされずに細胞周期が進行する。さらにBUBR1は老化に関与することが明らかとなって来た。

4. 症状

出生前から低身長と低体重を示し、重度の小頭症を伴い精神発育遅滞を呈する。小脳虫部の低形成・Dandy-Walker奇形・白内障を伴い、生後数ヶ月から難治性けいれんを発症する。

5. 合併症

ほぼ全例がWilms腫瘍や横紋筋肉腫を発症する。Wilms腫瘍は生後2〜16ヶ月で通常よりも早く発症し、両側性のことが多い。腫瘍組織は腎嚢胞を伴って成熟度が比較的高い。

6. 治療法

悪性腫瘍の早期診断と治療が重要。紡錘体チェックポイント機能が破綻しているので、紡錘体重合を阻害するビンクリスチンやタキソールの使用には注意が必要である。

7. 研究班

先天性異常の疾患群の診療指針と治療法開発をめざした情報・検体共有のフレームワークの確立