消化器系疾患分野|非胆道閉鎖新生児胆汁うっ滞症(平成24年度)

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1. 概要

非胆道閉鎖新生児胆汁うっ滞症とは、新生児から乳児期に発症する閉塞性黄疸を主訴とする疾患の内で胆道閉鎖症が否定された内科的な胆汁うっ滞を来す疾患群である。この疾患群に含まれるものとしては、Alagille症候群、シトリン欠損に伴う新生児胆汁うっ滞(NICCD)、PFIC、新生児肝炎などが含まれる。これらの疾患群は以前は特発性の新生児肝炎として診断されていたものである。しかし最近になり分子レベルので病態解明が進んだ結果、NICCDやPFICなどが新生児肝炎から独立して認知されるようになってきた。

2. 疫学

この疾患群の正確な発症数は未調査である。

3. 原因

Alagille症候群はその原因遺伝子としてJAG1,Notch2が同定されている。JAG1が原因のものを1型、Notch2が原因のものを2型とされている。NICCDはSLC25A13 の遺伝子産物であるシ トリンの欠 損により細胞質へのアスパラギン酸供給障害やミトコンドリアへの NADH の供給障害、糖新生障害を生 じる。新生児・乳児期では胆汁うつ滞症、高シトルリン血症を生じる。PFICは胆汁酸トランスポーターの遺伝子異常により発症する。FIC1, ABCB11 BSEP, ABCB4 MDR3が原因遺伝子として同定されており、それぞれの異常が1型、2型、3型とされている。

4. 症状

この疾患群に共通する症状は黄疸である。この黄疸は閉塞性黄疸であるため、時にビタミンK欠乏による出血傾向を伴う場合がある。胆道閉鎖症と重複する部分も多く、鑑別が必要となる。あとは各疾患に特徴的な症状としてはAlagille症候群では肝外徴候としての心血管系の異常、椎体異常、後部胎生環がある。NICCDでは高ガラクトース血症、高メチオニン血症を来し、新生児マススクリーニングが発見の契機となることがある。PFICは乳児期に胆汁うっ滞による肝障害を発症し、その後慢性かつ進行性の経過で通常10年以内に肝硬変に至る。

5. 合併症

Alagille症候群では、黄疸を伴う患者の1/3が乳児期以降に胆汁性肝硬変へと進行し、肝移植を必要とする。また移植後にも成長障害や血管奇形による頭蓋内出血の可能性がある。PFICはPFIC1において、肝移植後にも難治な脂肪下痢や成長障害を伴うことがある。NICCDは一般的には予後良好であるが、時に胆汁性肝硬変に至るものや、十数年後に神経・精神学的症状を伴ったCTLN2を発症する症例もある。

6. 治療法

胆汁うっ滞を認めた場合は、通常の血液生化学検査、血液凝固検査、アミノ酸分析、胆汁酸分析、各種感染症検査、内分泌的検査や腹部超音波などの検査を行う。Alagille症候群を検索するためには心エコーによる末梢性肺動脈狭窄の検索や眼科的検索が必要となる。PFICやNICCDはそれぞれの遺伝子検査が有用である。胆汁うっ滞に対する治療は、凝固障害がある場合にはビタミンKの静脈内投与が有効である。またMCTミルクや脂溶性ビタミンの補充、UDCA、フェノバルビタールの投与を行う。掻痒感に対しては抗ヒスタミン剤やコレスチラミンを投与する。原疾患によっては肝硬変へと進展し、最終的に肝移植を必要とする。

7. 研究班

小児期からの消化器系希少難治性疾患の包括的調査研究とシームレスなガイドライン作成