肝臓疾患分野|多発肝のう胞症(平成24年度)

たはつかんのうほうしょう
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1. 概要

肝臓内にのう胞が多発する疾患で女性に多い。肝のう胞そのものは良性疾患であるが、
のう胞が増加して巨大になることにより周囲の臓器が圧迫されて呼吸困難や運動制限などが生じる。また、感染やのう胞内出血などの危険性もあり、肝機能に影響を及ぼすこともある。

2. 疫学

詳細は不明であり、調査課題である。

3. 原因

発症原因は不明であるが、女性患者が多いことにより女性ホルモンとの因果関係が想定されている。多発性のう胞腎を合併しない多発肝のう胞症患者では、PRKCSH遺伝子とsec63遺伝子の変異がオランダやノルウェーのグループから報告されている。しかし、日本人患者において本疾患と両遺伝子の関連については解析されておらず、患者試料を使った研究の遂行が必要である。

4. 症状

血液検査では肝機能異常を認めないことが多いが、のう胞が巨大化して周辺臓器への圧迫症状が生じる。そのため腹部膨満、腹痛、呼吸困難、運動制限、下腿浮腫、ヘルニアなどの症状で長期にわたって生活に支障をきたす。

5. 合併症

約半数の症例に多発性のう胞腎を合併する。のう胞内感染による発熱、出血などがある。さらに、頻度は低いが腹水、閉塞性黄疸、肝静脈閉塞が起こることもある。また、下大静脈が圧迫されることにより下腿浮腫が起こることもある。

6. 治療法

穿刺吸引、肝切除、肝移植およびTAEが行われているが、その有効性は明らかではない。

7. 研究班

多発肝のう胞症に対する治療ガイドライン作成と試料バンクの構築研究班