整形外科疾患|脊髄障害性疼痛症候群(平成23年度)

せきずいしょうがいせいとうつうしょうこうぐん
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1. 概要

脊髄障害性疼痛症候群は脊髄障害に起因すると考えられる多彩な痛みであり、通常痛みを起こさない刺激が痛みを引き起こすアロデニアや障害脊髄高位以下の締め付けられるような自発痛などを生ずる。脊髄の障害が引き起こされる後縦靭帯骨化症や脊髄空洞症や脊髄損傷後などに発症し、一部の薬剤が奏功する症例も存在するが一般に治療抵抗性であるため患者の日常生活を極めて悪化させる要因となる。

2. 疫学

地域研究の結果では手足にしびれや痛みを生ずるものは人口の20%ほど存在するが本症候群に至るケースは人口の0.15%程度であることが判ってきている。
多彩な痛みを呈するが、全国の本症候群の患者(1682名)を対象とした調査では脊髄障害高位にアロデニアを呈したものが43%、脊髄障害よりも下位にしびれ痛みを呈したものが68%、筋性疼痛:46%であった。

3. 原因

脊髄損傷だけでなく、頚椎症性脊髄症や後縦靭帯骨化症などの圧迫性脊髄症において脊髄が直接傷害されることで症状が出現する。
圧迫の解除などによっては改善しないことも多く、MRIにおいては脊髄病変が観察されるがその発症のメカニズムについては不明な部分が多い。

4. 症状

脊髄の障害が引き起こされた部位以下の自発痛、しびれ、感覚鈍麻。
障害高位のアロデニア(異痛症):通常痛みを引き起こさない触覚刺激あるい冷温刺激で痛みを生ずることがある。痛覚過敏:侵害刺激(機械的痛み刺激あるいは温熱痛刺激)によって強い痛みを生じることがある。MRIによる画像診断では障害部位に圧迫性病変、脊髄空洞症、脊髄内高輝度変化などを認めることが多い。

5. 合併症

脊髄性の運動障害
運動障害に起因する関節拘縮、廃用症候群など自律神経障害膀胱直腸障害反応性うつ状態

6. 治療法

抗てんかん剤、抗うつ剤などの薬物療法が一部有効なことがある。抗てんかん剤はナトリウムチャネルやカルシウムチャネルを阻害することで神経の興奮性を抑制することで鎮痛効果が得られると推察される。抗うつ剤の本症候群に対する作用機序は不明であるが、下行性鎮痛抑制系の賦活作用あるいは抗うつ作用によると考えられる。カウンセリングや痛みに対する生活の指導も一部有効である。

7. 研究班

脊髄障害性疼痛症候群の実態の把握と病態の解明に関する研究班