免疫系疾患分野|中條―西村症候群(平成23年度)

なかじょう―にしむらしょうこうぐん
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1. 概要

幼少児期に凍瘡様皮疹にて発症し、結節性紅斑様皮疹や周期性発熱を繰り返しながら、次第に長く節くれ立った指、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮が進行する。血族婚や家族内発症が多い劣性遺伝性疾患であり、発症地域にも偏りがある。慢性反復性の炎症と進行性のやせ・消耗を特徴とする、特異な自己炎症疾患である。本邦特有とされたが、2010年に欧米・中東から報告されたJMP症候群・CANDLE症候群と一連の疾患群を形成すると考えられる。

2. 疫学

国内に10例程度。大半が30-40歳代だが、幼児例も存在する。

3. 原因

免疫プロテアソームのb5iサブユニットをコードするPSMB8遺伝子のホモ変異による。この変異によってプロテアソーム複合体による細胞内蛋白質分解機能が低下し、細胞内にユビキチン化蛋白質が蓄積した結果、ストレス炎症や組織変性が起こると考えられる。検索し得た患者全てに同じ変異を認め、その周囲にホモ接合領域が続くことから、何世代か前に特定の個人に生じた変異が受け継がれたものと考えられる。なおJMP症候群においては、原因としてPSMB8遺伝子の異なるホモ変異が見出されている。

4. 症状

幼少児期に手足の凍瘡様皮疹にて発症し、その後結節性紅斑様皮疹が全身に出没したり、周期性発熱や筋炎症状を繰り返すようになる。早期より大脳基底核の石灰化を伴うが、成長発達障害ははっきりしない。次第に特徴的な長く節くれ立った指と、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮、やせが進行し、手指や肘関節の屈曲拘縮を来す場合がある。LDH、CPK、CRPやAAアミロイドが高値で、抗核抗体が陽性になることがある。一方ステロイド内服により逆に腹部や下半身の肥満を来す場合もある。脂質代謝異常ははっきりしないが、恐らく呼吸障害や心機能低下のために早世する症例が多い。

5. 合併症

手指や肘関節の屈曲拘縮、やせ、筋力低下、肺・心臓・肝臓機能低下など。

6. 治療法

標準的治療法はない。ステロイド内服が行われ、発熱、皮疹などの炎症の軽減には有効だが、萎縮ややせには無効である。むしろ長期内服による成長障害、代償性肥満、緑内障、骨粗鬆症など弊害も多い。

7. 研究班

中條ー西村症候群の疾患概念の確立と病態解明に基づく特異的治療法の開発研究班