循環器系疾患|内臓錯位症候群(平成23年度)

ないぞうさくいしょうこうぐん
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1. 概要

先天的に脾臓がない(無脾症)、または脾臓が2個以上ある(多脾症)状態に加えて、内臓が左右対称に形成される。複雑心奇形、様々な腹部臓器異常、免疫低下などを合併する症候群である。心疾患は、単心室、共通房室弁、肺動脈狭窄、両大血管右室起始症などの合併があるが、手術がしばしば困難で、手術後遠隔期に心不全などによる死亡例もある。合併する免疫低下などにより重症感染症の頻度も高い。

2. 疫学

10,000人に1人の頻度で発生する希な原因不明、予後不良の疾患である。

3. 原因

遺伝子異常が原因と考えられるが、その発症機序は不明である。動物実験ではレチノイン酸の母胎への投与で本症候群の胎仔が発生することがわかっている。

4. 症状

先天性心疾患は、単心室、共通房室弁、肺動脈狭窄、両大血管右室起始症などがあり、その症状は、新生児期からの哺乳障害、多呼吸、体重増加不良、チアノーゼなどである。その他、脾臓低形成にともなう易感染性などを認める。

5. 合併症

消化管の回転異常による胃軸捻転、小腸イレウスをきたす。重症感染症(敗血症、細菌性心内膜炎、肺炎など)を合併する。先天性心疾患に伴う心不全、チアノーゼが多い。心疾患の外科治療に伴う死亡があり得る。チアノーゼが長年続くと、腎不全を合併する。重症な心疾患や重症感染症のために、長期予後は不良である。突然死も多発する。

6. 治療法

新生児期には易感染性に対する治療。新生時期、乳児期には先天性心疾患に対する外科治療。小児期、成人期には、心不全やチアノーゼに対する内科的治療(酸素療法や薬物治療)。

7. 研究班

内臓錯位症候群の疫学と治療実態に関する研究班