血管奇形分野|新生児・乳幼児難治性肝血管腫(平成23年度)

しんせいじ・にゅうようじなんちせいかんけっかんしゅ
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1. 概要

新生児および乳幼児の肝血管腫は、低年齢児にみられる代表的な肝腫瘍の一つである。組織学的には良性腫瘍に分類されるが、増殖性、異型性の強い組織像を示すものもみられる。患児の体重が小さく身体機能が未熟であることに加えて、腹腔の相当の容積を巨大な腫瘍が占拠するため、呼吸循環不全を併発し、さらに腫瘍血管床における血小板消費から血液凝固異常を起こすなど、特異な危急的病態を呈する。一般的に血管腫に対する治療としてステロイド、放射線照射、血管塞栓などが提唱される。近年、プロプラノロールの投与や肝移植が行なわれることもある。しかしながら新生児などの低年齢児における肝血管腫の病態は危急的であり、治療は未確立である。

2. 疫学

本研究班による昨年度の二次調査では、全国で過去5年間に23例が報告された。
一昨年度の一次調査の結果も勘案すると、重篤な症例の発症は全国で年間10例程度と考えられる。

3. 原因

血管増生、血管形成異常、母体のホルモンの影響など諸説がある。

4. 症状

本研究班による全国調査では、腹部膨満(47.4%)、高拍出性心不全(47.4%)、凝固障害 (42.1%) 、呼吸不全 (31.6%) が最も多く見られ、さらに肝機能障害(15.9%)、腎不全(10.6%)、肝脾腫(5.3%)、拡張型心筋症(5.3%)、甲状腺機能低下症(5.3%) および体重増加不良(5.3%) が続いた。

5. 合併症

心不全:腫瘍血管床増大による循環系負荷から、胎児水腫や新生児心不全を併発する。
Kasabach-Merritt症候群(消費性凝固障害):血管腫内の微小血管内における凝固因子、血小板の消費から血液凝固障害を併発する。
高ガラクトース血症・高アンモニア血症:肝内門脈肝静脈シャント形成による。

6. 治療法

ステロイド療法、プロプラノロール療法、抗がん剤投与、血管腫塞栓療法、外科手術、肝移植

7. 研究班

「新生児および乳児肝血管腫に対する治療の実態把握ならびに治療ガイドライン作成の研究」研究班