その他|Wolfram症候群(ウォルフラム症候群)(平成23年度)

Wolframしょうこうぐん
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1. 概要

若年発症の糖尿病が初発症状となり、次いで視神経萎縮により視力障害を来す。この2つの特徴的な症候の合併により診断される。常染色体劣性遺伝性疾患。
糖尿病と視神経萎縮に加えて内分泌代謝系、精神神経系を広範に障害し、尿崩症、難聴、尿路異常、多彩な神経・精神症状などを合併する。主要徴候を英語で現したときの頭文字を取ってDIDMOAD症候群と呼ばれることもある。

2. 疫学

日本での患者数は150から200人と推定される。

3. 原因

原因遺伝子WFS1が1998年に同定され、遺伝子診断が可能になった。この遺伝子にコードされる蛋白、WFS1蛋白 (wolframin)は主に細胞内小器官である小胞体に存在し、この蛋白を欠損する細胞は小胞体ストレスに脆弱であることが示されている。また、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞では小胞体に加えてインスリン分泌顆粒にも存在していることが最近明らかになっている。しかしながらこの蛋白の機能や、症候の発症メカニズムについては依然不明な点が多い。
また、WFS1遺伝子変異によらないWolfram症候群も存在し、疾患の多様性が明らかになっている。最近、WFS2としてCISD2遺伝子が同定された。

4. 症状

典型例では10歳前後に発症するインスリン依存性の糖尿病が初発症状となる。やや遅れて視神経萎縮による視力障害が発症し、失明に至りうる。この2つの徴候の合併によりウォルフラム症候群の診断がなされている。
その他、中枢性尿崩症、聴力障害(感音性難聴)や尿路異常(水腎症、尿管の拡大)、神経症状(脳幹・小脳失調、けいれん)、精神症状(抑鬱、双極性障害など)を種々の組み合わせで合併し、これらの症候に伴う多彩な症状を呈する。
症候は一般に進行性であるが、症例あるいは病期により、一部の症候のみを呈する場合がある。

5. 合併症

主な症状の欄に記したように多彩な症候を合併する。
尿路異常に伴う腎不全や、加えての神経症状を誘因とする種々の感染症などが生命予後を決定しうる。

6. 治療法

糖尿病に対してはインスリン療法、尿崩症に対してはデスモプレッシンの投与が行われる。その他、必要な対症療法、支持療法が行われる。根本的な治療は確立されていない。

7. 研究班

Wolfram症候群の実態調査に基づく早期診断法の確立と診療指針作成のための研究班