代謝疾患分野|新生児糖尿病(平成23年度)

しんせいじとうびょうびょう
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1. 概要

新生児糖尿病は生後6ヶ月未満に発症する糖尿病の総称である。通常、高血糖あるいはケトアシドーシスの発症を契機に発見され、インスリン治療が必要であるとされており、インスリン治療を生涯離脱できない永続性と、徐々に膵β細胞インスリン分泌が回復しインスリン治療離脱が可能となる一過性新生児糖尿病に分類される。

2. 疫学

30~50万人出生に1人程度の発症頻度と推定されている。

3. 原因

新生児糖尿病の発症原因は長らく不明であったが、近年、新生児糖尿病患者において、インスリン分泌調節に重要な役割を担っているATP感受性K+チャネルの2つの構成サブユニット、Kir6.2およびSUR1の遺伝子異常、さらにはインスリン遺伝子異常が報告された。新生児糖尿病患者における同遺伝子変異を認める頻度は報告により様々で、人種差も示唆されており、日本人におけるゲノム疫学的実態解明は今後の検討課題である。

4. 症状

低体重で出生することが多く、新生児期に高血糖、多尿、脱水を認め、時にケトアシドーシスを発症する。慢性的に高血糖や代謝異常が続くことにより、糖尿病に特徴的な四肢のしびれや疼痛、知覚異常など(末梢神経障害)、起立性低血圧、無自覚性低血糖、便秘、発汗異常など(自律神経障害)、蛋白尿、浮腫、電解質異常など(腎症)、視力障害、時に失明(網膜症)などの症状が生じることがある。また、重症例においては、発達遅滞やてんかんなどの神経症状を伴うこともある。

5. 合併症

細小血管障害である糖尿病神経障害(末梢神経障害、自律神経障害)、糖尿病腎症および糖尿病網膜症に加え、大血管障害である脳血管障害、虚血性心疾患、足潰瘍および壊疽などが生じることがある。

6. 治療法

インスリン療法。一部症例ではスルホニル尿素薬(経口薬)も有効であるが、遺伝子変異部位による薬剤反応性の評価および長期服用による影響等の検証は今後の検討課題である。

7. 研究班

厚生労働科学研究(難治性疾患克服研究事業)「日本人における新生児糖尿病発症原因遺伝子異常の実態把握および遺伝子変異部位による薬効変化に関する検討」班 
(研究代表者:京都大学 稲垣 暢也)