代謝疾患分野|遺伝性高チロシン血症Ⅱ型(平成23年度)

いでんせいこうちろしんけっしょうにがた
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1. 概要

遺伝性高チロシン血症II型 [MIM276600 HEREDITARY TYROSINEMIA TYPE II]は細胞質チロシンアミノ基転移酵素(TAT: EC2.6.1.5)の欠損症である。I型やIII型より血中チロシン値が高く、I型のような肝・腎障害を認めない。II型の皮膚病変はチロシンの針状結晶が析出することによって出現し、手掌・足底に限局した過剰角化、びらんを生じる。

2. 疫学

高チロシン血症II型は1960年代末にアミノ基転移酵素の欠損であることが明らかにされた。わが国でもこれまで数例の報告がある。

3. 原因

細胞質チロシンアミノ基転移酵素(TAT: EC2.6.1.5)の欠損症である。体液中の高いチロシン濃度によって臨床症状を呈する。この症状の一部はチロシンの溶解度が低いことと関連している。皮膚や角膜では他の部位よりも温度が低下しやすく、チロシン結晶が析出しやすいことによって細胞障害を生じると考えられる。一方、精神発達の遅延も多くの患者で観察されている。これは血中チロシン値の上昇と関連して出現している。

4. 症状

皮膚病変はチロシンの針状結晶が析出することによって出現し、手掌・足底に限局した過剰角化、びらんを生じる。また角膜においてもチロシンの結晶が析出し、角膜のびらん・潰瘍が生じる。角膜の変化は皮膚症状より早く出現し、生後数ヶ月から見られるが、思春期以降に明らかになる症例もある。

5. 合併症

血中チロシン濃度が特に高い一部の症例では精神発達の遅れを認めることがある。

6. 治療法

血液中のチロシン値を低下させることを治療の目標とする。チロシン値の低下に伴って皮膚および眼の症状は改善する。そのため、低フェニルアラニン・低チロシン食、特殊ミルクによる治療をおこない、血中チロシン値を10mg/dl以下に保つ。

7. 研究班

高チロシン血症を示す新生児における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究