免疫系疾患分野|外胚葉形成不全免疫不全症(平成23年度)

がいはいようけいせいふぜんめんえきふぜんしょう
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1. 概要

NF-κBシグナルが低下することで発症し、NF-κB essential modulator(NEMO)やIκBα遺伝子異常が原因であるが、その大半はNEMO遺伝子異常。外胚葉形成不全(歯牙欠損、発汗低下、毛髪が粗)や免疫不全症を発症し、特にヘルペス属感染症や抗酸菌感染症に対して重症化し、死亡する例も多い。また、炎症性腸疾患の合併頻度が高く、約半分の患者で炎症性腸疾患を発症し、短腸症候群や吸収不良症候群にて発達発育不全をきたす。一部の症例では破骨細胞の機能低下による大理石病も発症する。

2. 疫学

全世界では100名を超す患者が報告され、我が国で14名の報告がある。

3. 原因

X連鎖型NEMO遺伝子異常症と常染色体優性遺伝IκBα遺伝子異常があるが、いずれもNF-κBシグナル低下による細胞障害による。炎症性腸疾患に関してはTNFaの関与が示唆され、抗TNFa抗体が著効する。大理石病に関しては、破骨細胞が原因であり、特に、遺伝子変異がNEMO遺伝子のZinc Fingerドメイン部位に集中していることから、他の遺伝子との関連が示唆される。

4. 症状

歯牙の欠損、粗な毛髪、発汗不全(外胚葉形成不全)、発熱、疼痛、咳嗽、嘔吐、下痢(易感染性)、
食思不振、嘔吐、下痢、血便、成長障害(腸管の形成不全)、病的骨折(骨形成異常による大理石病)

5. 合併症

感染症:抗酸菌感染症、ニューモシスチスカリニ肺炎、ヘルペス脳炎、サイトメガロウイルス血症
免疫異常:特異抗体産生不全、低ガンマグロブリン血症、関節リウマチ、溶血性尿毒症症候群、血球貪食症候群。
腸管形成異常:短腸症候群、腸管狭窄、腸管閉鎖、過敏性腸症候群、炎症性腸炎

6. 治療法

感染症に対する予防投薬としてガンマグロブリン補充療法やST合剤投与。感染時には速やかな抗菌剤の投与。BCG接種の回避。炎症性腸疾患に対してはサラゾスルファピリジン、メサラジン、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤が投与され、難治の場合は抗ヒトTNFαモノクローナル抗体を考慮する。数例幹細胞移植が行われているが、移植関連合併症や炎症性腸炎の悪化など、その効果・安全性は確立されていない。

7. 研究班

自然免疫異常による難治性腸炎に関する研究班