皮膚疾患分野|遺伝性対側性色素異常症および遺伝性汎発性色素異常症(平成23年度)

いでんせいついそくせいしきそいじょうしょうおよびいでんせいはんぱつせいしきそいじょうしょう
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1. 概要

遺伝性対側性色素異常症(Dyschromatosis symmetrica hereditaria; DSH)は手足に小色素斑および小脱色素斑が「まだら」に出現する色素性疾患である。遺伝性汎発性色素異常症(Dyschromatosis universalis hereditaria; DUH)はこの皮疹が全身に拡大した疾患である。

2. 疫学

DSH 約300 人、DUH 約60 人の報告を確認するのみだが、実際はさらに多くの患者が存在すると予想される。(正確な患者数の統計はない。)患者はいずれも日本人を中心とした東アジア人がほとんどである。

3. 原因

DSHは常染色体優性遺伝の形式をとる遺伝性疾患であり、原因遺伝子がRNA編集酵素である二重鎖RNA特異的アデノシン脱アミノ化酵素遺伝子(ADAR1)と同定された。しかし、その特異な臨床像を作り出す機序は依然として不明である。DUHでは、常染色体優性および劣性遺伝の両方の家系が報告されており、それぞれ異なる遺伝子座位が報告されているが、いまだ原因遺伝子の同定には至っておらず、病態も不明のままである。

4. 症状

DSHは四肢末端、とくに手背・足背に小色素斑と脱色素斑が密に混在する「まだら」な皮疹が特徴である。実際は皮疹が指しか認められないものや上腕や大腿まで見られるものまで程度はさまざまである。顔面に雀卵斑様の皮疹を認めることが多い。DUHでは同じ皮疹が全身に広がっているのが特徴である。

5. 合併症

通常はDSHおよびDUHいずれも合併症はみられない。しかし、DSH患者のうち、重篤な神経症状(ジストニア、精神遅滞、脳の石灰沈着)を合併した症例が3例報告されている。

6. 治療法

有効な治療法はない。

7. 研究班

遺伝性対側性および汎発性色素異常症の本邦における診療実態の把握、治療指針の作成と新治療戦略の開発研究班