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多発性硬化症に特異的な初発症状はないが、視力障害が比較的多く、球後視神経炎の20%位は多発性硬化症に発展する。
多発性硬化症の全経過中にみられる主たる症状は視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害等であり、病変部位によって異なる。
多発性硬化症の病変は脳室周囲に接して好発し、MRIでとらえることができるが、これらの病変は臨床症状を示さないことが多い。これに対し、第4脳室周囲の病変は、小脳症状や脳幹部の症状を示すことが多く、小脳症状としては躯幹失調、四肢の運動失調、企図振戦を特徴とする。脳幹部の症状としては各種脳神経麻痺、眼球運動障害などが多く、両側性の内側縦束(MLF)症候群は診断的価値がある。延髄の病変では難治性のしゃっくりや呼吸障害を起こすことがあり、特に後者では緊急の処置を必要とする場合がある。
視神経障害では視力の低下、視野の異常、特に視野の中心部が見えにくくなる中心暗点が特徴であり、眼球運動時の痛みを訴えることもある。我が国の多発性硬化症では時に急激に両側性全盲となるなど重篤な視力障害と横断性脊髄炎の症状、すなわち対麻痺と鮮明なレベルを示す感覚障害、そのレベルの帯状感覚障害を示すものがある。このような病態は Devic病として分離して考えられてきた。現在、多発性硬化症の一型である視神経脊髄型MSと欧米文献におけるneuromyelitis opticaとの異同が研究者の間で論議されている。
脊髄障害の回復期に有痛性強直性痙攣 painful tonic spasm を示すことがある。これは自動的あるいは他動的に足を曲げたりする刺激が発作を誘発し、痛みやしびれを伴って一側あるいは両側の下肢が強直発作を示すもので、リハビリに際し四肢を他動的あるいは自動的に動かすことが刺激となって誘発されることがある。発作は数十秒以内におさまる。
神経因性膀胱も多発性硬化症に多く見られる所見で、脊髄障害の初期には麻痺性膀胱による尿閉を起こすことがあり、しばしば導尿を要する。回復期には無抑制性膀胱となり、頻尿と排尿困難あるいは失禁を訴える。
このほか多発性硬化症に特徴的な症状としてUthoff徴候がある。これは体温の上昇に伴って神経障害が悪化し、体温の低下により元に戻るものである。例えば入浴や炎天下の外出により視力が一過性に悪化したり、四肢の筋力が低下したりするなどである。これは脱髄により神経の伝導が低下している条件下で、体温上昇によりKチャンネルが開いて伝導効率がさらに低下することに起因する。風呂やリハビリの部屋の温度はあまり高くしないよう推奨されている。
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