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■概念・定義

全身性エリテマトーデスはDNA−抗DNA抗体などの免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患である。症状は治療により軽快するものの、寛解と憎悪を繰り返して慢性の経過を取ることが多い。

■疫学

全国疫学調査の結果、1991年の全国受療患者数は23,300人であった。発病率は10万人あたり10〜100人と推定されている。若年女性に好発し、発症年齢は20〜40歳代であることが多い。

■病因

一卵性双生児での全身性エリテマトーデスの一致率は25%程度であることから、何らかの遺伝的素因を背景として、感染、性ホルモン、紫外線、薬物などの環境因子が加わって発症するものと推測されている。その結果、自己抗体、特に抗DNA抗体が過剰に産生され、抗原であるDNAと結合して免疫複合体を形成される結果、組織に沈着して補体系の活性化などを介して炎症が惹起される。

■症状

(1)全身症状

全身倦怠感、易疲労感、発熱などが先行することが多い。

(2)皮膚・粘膜症状

蝶形紅斑とディスコイド疹が特徴的である。蝶形紅斑は頬のみならず鼻梁に掛かるのが特徴である。日光暴露で憎悪する。皮膚生検では、真皮表皮結合部IgGの沈着が認められる(ループスバンドテスト陽性)。ディスコイド疹は顔面、耳介、頭部、関節背面などによくみられ、当初は紅斑であるが、やがて硬結、角化、瘢痕、萎縮をきたす。このほか凍瘡様皮疹、頭髪の脱毛、日光過敏も本症に特徴的である。口腔、鼻咽腔に無痛性の潰瘍が出現することもある。

(3)筋・関節症状

筋肉痛、関節痛は急性期によくみられる。関節炎もみられるが、骨破壊を伴うことはないのが特徴である。

(4)腎症状

糸球体腎炎(ループス腎炎)は約半数の症例で出現し、放置すると重篤となる。急性期では、蛋白尿がみられ、尿沈渣では赤血球、白血球、円柱などが多数出現する( telescoped sediment)。

(5)神経症状

中枢神経症状を呈する場合は重症である(CNSループス)。うつ状態、失見当識、妄想などの精神症状と痙攣、脳血管障害がよくみられる。髄膜炎、脳炎、脳神経障害も稀ではあるがみらることがある。

(6)心血管症状

心外膜炎はよくみられ、タンポナーデとなることも稀にある。心筋炎を起こすと、頻脈、不整脈が出現する。弁膜病変は一般に無症状であるが、軽度の大動脈弁不全や僧帽弁不全を起こすことがある。また、弁尖に疣贅を形成してLiebman-Sachs 心内膜炎を呈することもある。また、反復する血栓性静脈炎を起こす場合には、抗リン脂質抗体症候群の合併が疑われる。

(7)肺症状

胸膜炎は急性期によくみられる。このほか、間質性肺炎、細胞出血、肺高血圧症は予後不良の病態として注意が必要である。

(8)消化器症状

腹痛がみられる場合には、腸間膜血管炎やループス腹膜炎に注意する。稀に膵炎を起こすこともある。肝障害は軽度かつ一過性のことか多い。

(9)造血器症状

溶血性貧血はよくみられ、直接クームス試験陽性で、網状赤血球の増加とハプトグロビンの低下などの所見から診断される。白血球減少や血小板減少もよくみられ、抹梢での破壊によるものと考えられている。抗リン脂質抗体症候群では、血栓症の多発、血小板減少に基づく出血症状などがみられるが、APTTの延長とともに抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなどが出現し、梅毒血清反応の生物学的偽陽性などがみられることもある。

(10)その他

リンパ節腫脹は急性期によくみられる。

■治療

(1) 非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)

発熱、関節炎などの軽減に用いられる。ただし、全身性エリテマトーデス患者は薬剤アレルギーを起こしやすいこと、NSAIDの長期投与は消化管潰瘍、腎障害などを起こしやすいこと、などに注意することが必要である。

(2) ステロイド剤

全身性エリテマトーデスの免疫異常を是正するためには副腎皮質ステロイド剤の投与が必要不可欠である。一般には経口投与を行ない、疾患の重症度により初回量を決定する。軽症例ではプレドニゾロン換算で1日15〜30mg、腎症のあるものは40mg以上、治療抵抗性のものは60〜80mgが用いられる。初回量は2〜4週間前後継続したのち、臨床症状、理学的所見、検査所見などの改善を指標として2〜4週毎に10%を目安に漸減する。疾患活動性の指標としては、血清補体価、C3、C4、抗DNA抗体価(特に抗体dsDNA抗体) が有用であるほか、血沈、尿蛋白、尿沈渣、血算などの検査所見が参考となる。ステロイド抵抗性の症例では、メチルプレドニゾロン1日500〜1,000mgを3日間点滴静注するステロイド・パルス療法が用いられる。ステロイド剤の維持量としては、プレドニゾロン換算で1日10mg以下が望ましい。  

ステロイド抵抗性の症例やステロイド剤に対する重篤副作用が出現する症例においては免疫抑制剤の投与が考慮される。免疫抑制剤としては、アザチオプリン (1日量50〜100mg)あるいはシクロホスファミド (1日量50〜100mg) の経口投与がよく用いられる(保険適応ではない)。しかし最近では、シクロホスファミド500〜750mgを1〜3カ月ごとに点滴静注するエンドキサン・パルス療法が難治性病態に対してよく用いられる(保険適応外である)。本法は有効性が高いばかりでなく、出血性膀胱炎、骨髄抑制などの副作用の発現が経口投与に比較して少ない。また、ミゾリビン(1日量150mg) の経口投与は、ループス腎炎に対して有効であることが報告されている。タクロリムス(プログラフ)にループス腎炎の効能が追加になっている。

(3) その他

高血圧を伴う場合には、腎機能障害の進行を防ぐためにも積極的な降圧療法が必要となる。腎機能が急速に悪化する場合には、早期より血液透析への導入を考慮する。  

急性憎悪型では、急性期を脱すれば透析を離脱する可能性がある。慢性憎悪型には早めに内シャントを作成する必要があり、持続的な透析が必要となる。抗リン脂質抗体症候群を合併している場合には、積極的な抗凝固療法が行われる。

■予後

本症は寛解と憎悪を繰り返し、慢性の経過を取ることが多い。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。

予後を左右する病態としては、ループス腎炎、中枢神経ループス、抗リン脂質抗体症候群、間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症などが挙げられる。

死因としては、従来は腎不全であったが、近年では日和見感染症による感染死が死因の第一位を占めている。

自己免疫疾患に関する調査研究班から

全身性エリテマトーデス 研究成果(pdf 25KB)

この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

情報提供者

研究班名免疫疾患調査研究班(自己免疫疾患)
情報見直し日 平成22年2月28日

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