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原発性高脂血症げんぱつせいこうしけっしょう

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1. 原発性高脂血症とは

原発性高脂血症の定義ならびに診断基準は、1983年に垂井清一郎博士を班長として発足した厚生省原発性高脂血症調査研究班によりまとめられました。同研究班ではまず高脂血症を、血清総コレステロール値が220mg/dl以上あるいは血清トリグリセリド(中性脂肪)値150mg/dl以上と定義しました。血中のコレステロールや中性脂肪はそのままの形では水に溶けにくくアポリポ蛋白という蛋白と結合して、血漿リポ蛋白という粒子となって血流中に存在し、組織から組織へ運搬されます。高脂血症はその成因により、血清脂質やリポ蛋白の代謝系に内在する異常から発症している原発性高脂血症と、他の外因や疾患に続発して起きている二次性高脂血症に大別されます。

原発性高脂血症は次の5つの病型に分類されています(表1)。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

患者さんの頻度は病型によって異なりますが、

・家族性複合型高脂血症 約100人に1人

・家族性高コレステロール血症
ヘテロ接合体(一方の親から異常遺伝子を受け継いだ患者さん) 約500人に1人
ホモ接合体(両親から異常遺伝子を受け継いだ患者さん) 100万人に1人

・家族性III型高脂血症 1万人に2〜3人

・家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症 100万人に1人といわれています。全ての病型を合わせても100人に1〜2人程度と考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

病型により異なりますが、遺伝性素因の影響が大きい病型(家族性高コレステロール血症など)ほど若年から発症し、生活習慣などの環境因子の影響が大きい病型(家族性III型高脂血症、家族性複合型高脂血症など)では成年以降に発症すると考えられます。男女比については現在研究中ですが、性ホルモン等の影響で動脈硬化発症の危険は女性の方が低いといわれています。

4. この病気の原因はわかっているのですか

いずれの病型も遺伝性素因が関わっていることが多く、さらに環境因子、あるいは生活習慣が加わって発症するものもあります。

原発性高カイロミクロン(食物由来の、中性脂肪に富む軽くて大きなリポ蛋白)血症の遺伝的原因として、カイロミクロンを分解する酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)、あるいはこの分解反応に必要なアポリポ蛋白CIIの先天的欠損症があります。また、原因不明の原発性V型高脂血症もあります。

家族性高コレステロール血症は、体内におけるコレステロールの運搬に最も大切な低比重リポ蛋白(LDL)の受容体の欠損(ホモ接合体)あるいは半欠損(ヘテロ接合体)による疾患です。この病気の患者さんは血中のLDLを十分に利用できず、変性したLDLが血管組織に沈着した結果、若年から粥状動脈硬化をきたします。家族性複合型高脂血症も、ある種の遺伝子異常を背景として環境因子によって修飾されて発症すると考えられます。特発性高コレステロール血症は前の二者を除いてなお原因不明の高コレステロール血症をいいますが、その原因の一つとしてアポ蛋白B100の遺伝子異常のためLDLが受容体と結合できない異常が最近発見されました。

内因性高トリグリセリド血症のうち家族性IV型高脂血症は、肝臓で作られ中性脂肪に富む超低比重リポ蛋白(VLDL)の増加を呈する高脂血症の一つですが、今のところ遺伝的な病因は明らかではありません。特発性高トリグリセリド血症は、遺伝的異常のない原因不明の疾患ですが、自己免疫などの関与、肝性リパーゼの何らかの異常などが関係していると推測されています。

家族性III型高脂血症の遺伝的背景として、脂質の代謝に重要なアポリポ蛋白Eの異常のため、リポ蛋白がLDL受容体と結合しにくくなり、この状態に何らかの環境因子が加わって発症すると考えられています。

原発性高HDLコレステロール血症は高比重リポ蛋白(HDL)が増加する病気ですが、これにより粥状動脈硬化症を伴う家系があることが報告されています。その原因の一つとして、コレステロールエステル転送蛋白の異常が明らかになっています。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝的原因によって起こることが明らかにされているものと、そうでないものに分けられています。

家族性高コレステロール血症については研究が進んでおり、優性遺伝(両親から受け継いだ遺伝子のうち一方でも異常があれば発症する)の形式をとることが明らかになっています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

原発性高カイロミクロン血症では血清トリグリセリドが3000mg/dlを超えると眼底に網膜脂血症(lipemia retinalis)を認め、さらにこの状態が長期に持続すると皮膚に発疹性黄色腫が出現します。カイロミクロンは肝臓や脾臓に取り込まれて処理されるので、しばしば肝臓や脾臓が腫れて大きくなります。また、脂肪塞栓による急性膵炎がおこることがあります。その主症状としては反復する上腹部痛があげられます。家族性高コレステロール血症ではアキレス腱の肥厚、結節性黄色腫、角膜輪などが特徴的で、高率に若年性粥状動脈硬化症をひきおこします。特に虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の危険性が高いといわれています。

家族性複合型高脂血症では肥満や耐糖能異常、高尿酸血症を伴うことが多く、虚血性心疾患になる危険性が高いといわれています。

家族性III型高脂血症では手掌線状黄色腫が特徴的で、虚血性心疾患や末梢動脈の動脈硬化を発症しやすいといわれています。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

治療の原則は食事療法で、カロリー制限(標準体重kgあたり25ないし30キロカロリーを目安とします)、脂質制限、コレステロール制限(300mg/日)、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の摂取比をあげる、などが大切です。また、肥満、喫煙、高血圧などほかの危険因子があればそれも治療することが合併症の予防につながります。運動療法も高脂血症の改善に効果があります。薬剤による治療としては高トリグリセリド血症にはフィブラート系(ベザトールSR、ベザリップ、リポクリン、アモトリールなど)、高コレステロール血症にはHMG-CoA還元酵素阻害剤(メバロチン、リポバス、ローコール)、コレスチラミン(クエストラン)、プロブコール(シンレスタール、ロレルコ)、エゼチミブ(ゼチーア)などが有効です。重症患者さんには血漿交換や、LDLアフェレーシスなど血清中の脂質を直接除去する方法が試されることがあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

適切な治療を行い、特に虚血性心疾患の予防、治療を十分に行うことができれば経過はおおむね良好で、生命予後も良いと考えられています。

情報提供者

研究班名代謝系疾患調査研究班 (原発性高脂血症)
情報見直し日 平成20年12月12日

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