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血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう(TTP)

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■概念・定義

まず血栓性微小血管障害症 (thrombotic microangiopathy, TMA)という病態診断名があります。これは1)細血管障害性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia: MAHA)、2)破壊性血小板減少、そして3)細血管内血小板血栓を3主徴とする病態で、検査診断学的には、破砕赤血球、血小板減少、血栓による臓器機能障害を特徴とする。このTMAの病態を示す代表疾患として、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura; TTP)と溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome; HUS )、それに様々な基礎疾患に合併する二次性TTP/HUSがある。

TTPは、1924年米国のEli Moschcowitzによって始めて報告された全身性重篤疾患で、症状は 上記の1)〜3)に、4)発熱、5)動揺性精神神経障害を加え、これを古典的5徴候と称する。 一方、これに良く似た溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome; HUS ) は上記の1)〜3)の3徴候からなる疾患で1955年にドイツのGasserらにより報告された。以後、TTPは極めて稀な疾患で、患者の殆どは成人であり、一方HUSは小児に多く、とりわけ近年は腸管出血性大腸菌O157:H7株による感染性腸炎に続発するものが殆どであると一般に認識されてきた。しかし、便中に志賀様毒素(通称、ベロ毒素)が検出できるO157感染に併発するHUSを除いて、TTPとHUSの両者は症状のみでは鑑別困難な例がしばしばある。これ故、近年はTMAという病態診断名も多用される傾向にある。

■疫学

TTPは後天性に生ずるものが一般的であるが、後述のように稀に先天性素因に基づいて起こるものがある。従って罹患年令は新生児から老人までと幅広いが、一般には10〜40歳代、特に30歳代に発症しやすいとされる。男女比では2:3で女性に多く、発症率は人口100万人に4人と推計されているが、TTPの診断技術の向上により、この疾患概念が一変しつつあるので、今後、頻度は大きく上方修正されると考えられる。

■病因

TTPの病因として、止血因子である血漿von Willebrand 因子(VWF)の特異的切断酵素(VWF-cleaving protease, VWF-CP)、別名ADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)、が同定された。即ち、VWFはその殆どが血管内皮細胞で産生され、血中に放出されるが、産生直後のVWFは超巨大分子構造を持ちunusually large VWF multimer (UL-VWFM)とよばれている。UL-VWFMは高い生物学的活性があるため、微小血管などで生じる高ずり応力によって過剰な血小板凝集を起こし、血栓にて血管を閉塞する。一方、ADAMTS13はその遺伝子が染色体9q34にあり、肝星細胞(旧 伊東細胞)で主に産生され血中に放出される。この酵素は1427アミノ酸残基からなる1本鎖糖蛋白で、アミノ末端よりSignal peptide (S)-Propeptide (P)-Metaloproteinase (MP)-Disintegrin-like (D)-Thrombospondin type 1 motif 1(T1)-Cysteine rich (Cys)/Spacer (Sp)-T2~T8-CUB-CUBと表現される分子内マルチドメイン構造を持つ。本酵素が効果的に働くためにはTドメインを介してADAMTS13 が血管内皮細胞膜蛋白CD36に結合し、細胞表面に固相化され、一方、Cys/Spドメインを介して基質UL-VWFMを捕捉し、そしてMPドメインで基質サブユニットのTyr1605-Met1606結合を切断するという図式が描かれている。即ち、“適切に”切断されたVWFMは「本来の止血因子」として働くが、切断されないUL-VWFMは細小動脈などの高ずり応力が生じる部位で血小板凝集を起こし、「病的血小板血栓の原因」になると説明される。典型的TTPではこのADAMTS13活性が欠損しており、その原因として、同遺伝子異常に基づく先天性TTP(別名 Upshaw-Schulman症候群, USS)と、同酵素に対するIgGあるいはIgM型の中和ないし非中和自己抗体の発生による後天性TTPが知られている。

TTPの病理学的特徴として、肺を除く広範囲の臓器(腎、脳、膵、副腎、心臓など)の微小血管内に硝子(ヒアリン膜)様物質が沈着し、血栓による血管閉塞から臓器機能障害を生じる。このような血栓は初期には血小板とVWFから構成されているが、陳旧性になると、血小板は脱顆粒し、さらにフィブリン血栓も混ずる事により、硝子様血栓に変化すると説明されている。さらに進展すると、血管内膜下での硝子様血栓の沈着、また血管内皮細胞の増殖も認められるようになる。

一方、ADAMTS13活性が軽度低下ないし正常の非定型TTPも存在する。この場合の病因も多彩で、事実、HUSとの鑑別も困難な例が多く、病名は単にTMAと表現される事もある。これにも先天性と後天性要因があり、前者については補体調節作用を持つ血漿因子Factor Hや血管内皮細胞膜貫通型蛋白CD46などの遺伝子異常によるものが報告されているが、本邦では未発見である。

後天性HUSの90%以上は前記のごとく、病原大腸菌O157:H7株の感染性腸炎に合併するもので、この菌が産生する志賀様毒素、別名ベロトキシン(VT)、はAとBのサブユニットが各々1ヶと5ヶからなるAB5型の外毒素であるが、この受容体であるグロボトリアロシルセラミド(Gb3)は血管内皮細胞と単球にある。 これら細胞のGb3にVTが結合すると様々なサイトカインが血中に放出されるが、放出されたサイトカインの多くは直接的・間接的に血小板を活性化しfibrinogen-fibrin/血小板血栓を生じる。またこれらサイトカインは内皮細胞障害を引き起こすと同時に、ここからのUL-VWFの放出も起こし、VWF/血小板血栓も生じる事が示唆されている。

■治療と予後

先天性TTP(USS):現時点では新鮮凍結血漿 (FFP) 10 ml/kg を2-3週毎に輸注してADAMTS13酵素補充を行い、血小板数を維持し、発症予防治療が行われている場合が多い。血小板輸血は禁忌である。近未来には遺伝子発現蛋白による酵素補充療法が可能となるであろう。

後天性TTP:TMA全体の約1/3の症例でADAMTS13活性は著減し、これらはほぼ全例ADAMTS13に対する自己抗体陽性である。それ故、FFP単独投与では不十分で、後天性・特発性TTPの治療は血漿交換(plasma exchange, PE)療法が第一選択である。この際ステロイドもしくはステロイドパルス療法が併用される事が多い。当然、PE実施前の血小板輸血は禁忌である。PEの効果は1)ADAMTS13の補充、2)同インヒビターの除去、3)UL-VWFMの除去、4)止血に必要な正常VWFの補充、に集約される。難治・反復例に対してはビンクリスチン、エンドキサンなどの免疫抑制剤の使用、脾摘なども考慮されるべきである。最近CD20に対するヒトーマウスのキメラ抗体であるリツキサンが有用との報告が数多くなされている。しかし、本邦では未だ保険適応外である。

O157:H7-HUS:治療の基本は支持療法である。とりわけ厳重な水・電解質の管理が重要で、腎不全徴候に対してはすみやかに透析療法を開始する。TTPとは異なり、PEの有効性は確立されていないが、将来的に血中からのVT吸着剤が開発され、PEと併用されるようになれば、その評価は異なったものになるであろう。血小板輸血は理論的には極力回避すべきである。また脳症があれば、痙攣と脳浮腫の治療を合わせ行う。

PEもしくはFFP輸注療法が導入される以前の死亡率は80%強と、非常に予後不良であった。しかし、これらの導入や抗血小板療法の併用により予後の改善は顕著で、現在、生存率はほぼ90%以上となっている。しかしながら、治療抵抗例あるいは再発例が多いことが知られ、今後解決されるべき問題と考えられる。

血液凝固異常症に関する調査研究班から

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) 研究成果(pdf 30KB)

この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

情報提供者

研究班名血液系疾患調査研究班(血液凝固異常症)
情報見直し日 平成22年2月17日

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