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筋萎縮性側索硬化症きんいしゅくせいそくさくこうかしょう(公費対象)

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(よくある質問と回答)

■概念・定義

主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。症状は、筋萎縮と筋力低下が主体で、進行すると上肢の機能障害、歩行障害、構音障害、嚥下障害、呼吸障害などが生ずる。一般に感覚障害や排尿障害、眼球運動障害はみられないが、人工呼吸器による長期生存例などでは、認められることもある。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2〜4年で死亡することが多い。

■疫学

発病率は人口10万人当たり0.4〜1.9で、年齢とともに増大して50〜60歳代でピークに達し、以降再び低下する。有病率は人口10万人当たり2〜7人で、本邦では紀伊半島に多発地域がある。男女比は約2:1で男性に多い。発病危険因子として地下水の金属イオン濃度や植物種子の摂取、外傷などとの関連があげられているが、確実なものは見出されていない。

■病因

筋萎縮側索硬化症(ALS)のうち5〜10%は家族歴を伴い、家族性筋萎縮側索硬化症(家族性ALS)とよばれる。家族性ALSの約2割では、フリーラジカルを処理する酵素であるCu/Zn superoxide dismutase (SOD1) 遺伝子の変異が報告されている(ALS1)。この遺伝子異常を導入したマウスおよびラットが確立され、広く病態研究に用いられている。その他にangiogenin, vesicle-associated membrane protein/synaptobrevin-associated membrane protein B (VAPB), TAR DNA-binding protein (TDP43), fused in sarcoma (FUS)遺伝子などに異常が報告されている。最近、日本の研究者によって細胞内シグナル伝達に重要な役割を果たすNF-κB(nuclear factor-kappa B)を制御するoptineurin遺伝子が新たな原因遺伝子であることが報告された。また、アラブ諸国に見られ、25歳以前に発病し、緩徐進行性である稀な ALS2 の原因遺伝子として guanine-nucleotide exchange factor である alsin が日本の研究者によって報告されている。ALS2 は、下位運動ニューロン症候が明らかでないために家族性痙性対麻痺の範疇に入るとの考えもある。

孤発性ALSの病態としてはフリーラジカルの関与やグルタミン酸毒性、なかでもグルタミン酸受容体のサブタイプであるAMPA受容体を介したグルタミン酸により神経障害をきたすという仮説が有力である。ヒトALS運動ニューロンではそのAMPA受容体のサブユニットであるGluR2 Q/R部位のRNA編集率が低下しており、孤発性ALSの病態に重要な役割を果たしていることが報告されている。また孤発性ALSの多数症例を用いてゲノムワイドに疾患感受性遺伝子を探索する研究も進行中である。その他に運動ニューロン死の機序としては、ウイルス感染、慢性炎症、慢性虚血など様々の仮説が提唱されている。

■症状

基本的には一次運動ニューロン障害の症候として、痙縮、腱反射亢進、手指の巧緻運動障害、病的反射の出現がみられ、二次運動ニューロン障害の症候として、筋力低下、筋萎縮、筋弛緩、線維束性収縮が認められる。発語、嚥下に関与する筋を支配する運動ニューロンが障害されると、構音障害、嚥下障害をきたし、呼吸筋を支配する運動ニューロンが障害されると呼吸障害を起こす。病初期には下位運動ニューロン障害、もしくは上位運動ニューロン障害のみが前景となることがあるが、最終的には上位運動ニューロンと下位の運動ニューロンが共に障害される。ただ、下位運動ニューロン症候が強い場合には、上位運動ニューロン症候が覆い隠される傾向がある。

ALSは発症様式により、(1)上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す上肢型(普通型)、(2)言語障害、嚥下障害など球症状が主体となる球型(進行性球麻痺)、(3)下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る下肢型(偽多発神経炎型)、の3型に分けられることがある。これ以外にも呼吸筋麻痺が初期から前景となる例や、体幹筋障害が主体となる例、認知症を伴う例などもあり多様性がみられる。

■治療

欧米における治験で、グルタミン酸拮抗剤リルゾール(商品名 リルテック)が生存期間を僅かであるが有意に延長させることが明らかにされ、1999年より本邦でも認可された。リルゾールのほかにも、近年、病勢の進行を遅らせる目的で数種類の薬剤が開発され、治験進行中ないし、治験計画中である。2010年2月時点において本邦で行われている治験としてはメチルコバラミンの大量投与(エーザイ株式会社)の二重盲検比較試験が行われている。

筋力低下や痙縮に伴って様々な二次的症状が出現する。不安や抑うつには安定剤や抗うつ薬を用い、痙縮が著しい場合は、抗痙縮剤を用いる。筋力低下に伴って関節運動やさらには体動ができなくなって、痛みや関節拘縮が出現する。痛みに対しては鎮痛剤や湿布薬を使用し、関節拘縮の予防には適度なリハビリが必要である。呼吸障害に対しては、非侵襲的な呼吸補助と気管切開による侵襲的な呼吸補助がある。嚥下障害には、食物の形態を工夫(原則として柔らかく水気の多いもの、味の淡泊なもの、冷たいものが嚥下しやすい)する、少量ずつ口に入れて嚥下する、顎を引いて嚥下するなど摂食・嚥下の仕方に注意する。嚥下障害の進行した場合、胃瘻形成術、経鼻経管栄養、経静脈栄養などを考慮する必要がある。現在の大勢は内視鏡的胃瘻形成術である。また進行に伴いコミュニケーション手段を考慮することが重要である。球麻痺がある場合は筆談が可能かどうか、コンピュータなどの入力が可能かどうか、など症状に応じた手段を評価し、早めに新たなコミュニケーション手段の習得を行うことが大切である。体や目の動きが一部でも残存していれば、適切なコンピューター・マルチメディア、意思伝達装置および入力スイッチの選択により、コミュニケーションが可能となることが多い。脳波を使う方法も報告されている。

■予後

症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約3.5年であるが、個人差が非常に大きい。進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。一方では、進行が遅く、呼吸補助無しで10数年の経過を取る例もあり、症例ごとに細やかな対応が必要となる。

自然歴の全国調査JaCALS

ALSをはじめとする神経変性疾患では、わが国の患者における自然歴を前向きに調査したデータが皆無であり、今後限られた患者数のなかで有効な臨床治験をデザインしていくうえで非常に重要な課題である。この問題の解決を目的の一つとしたALS患者の臨床情報と遺伝子を併せた大規模な調査研究が厚生労働省「神経変性疾患に関する調査研究」班(主任研究者 中野今治)を中心として開始された (JaCALS http://www.jacals.jp/ 事務局は名古屋大学神経内科)。2009年10月現在で登録症例はALS 359例、対照151例となっている。今後はこの自然歴調査と臨床治験が同時並行で進行していくことが想定されるが、疾患頻度の低い神経変性疾患では、観察研究と臨床治験が上手に情報を共有しながら進んでいくことが、質の高いアウトカムを得るうえで重要と考えられる。

神経変性疾患に関する調査研究班から

筋萎縮性側索硬化症(ALS) 研究成果(pdf 31KB)

この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

この疾患に関する関連リンク

ALS治療ガイドライン(日本神経学会)

神経変性疾患に関する調査研究班ホームページ

情報提供者

研究班名神経変性疾患に関する調査研究班
情報更新日 平成22年4月30日

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