奇形症候群分野|ヤング・シンプソン症候群(平成22年度)

やんぐ・しんぷそんしょうこうぐん
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1. 概要

ヤング・シンプソン(Young-Simpson)症候群は、1987 年にYoungとSimpsonが先天性心疾患、甲状腺機能低下症、精神遅滞、眼瞼裂狭小を含んだ顔貌異常を特徴とする1症例として報告したのが第1例で あり、その後、4例の報告があった。さらに、それに続き、当研究組織の一人であるMasunoが1999年に2例を追加報告し、極めて特徴的な症候群とし てまとめた。

2. 疫学

ヤング・シンプソン症候群は、最初の報告(Young & Simpson, 1987)以降、同様症例の報告が相次ぎ、現在まで15例以上の報告例が確認されているが、その診断や遺伝形式、病因、疫学に関しては明確にされていな い。わが国からも、当研究組織の研究者らによる報告があり(Masuno, Am J Med Genet, 1999; Kondoh, Am J Med Genet, 2000)、その病因・病態の解明が重要課題となっている。明確な診断基準がないために、病因遺伝子や病態は勿論、正確な発生頻度も明らかにされていな い。また、正確な診断を下すことができる臨床奇形学(Dysmorphology)の専門家がわが国に少ないことも、本疾患の病因病態が明らかでないこと の大きな理由である。

3. 原因

現在まで、原因不明であり、遺伝形式は常染色体劣性などの報告もある が、殆どが孤発例である。Brancatiら(2009)により、ゲノム微細構造異常を伴うヤング・シンプソン類似症例の報告があるが、専門家の間では合 意は得られていない。解明には、より多くの症例での高密度全ゲノムアレイCGHや、次世代シークエンサーなどによる全ゲノムシークエンスによる解析が不可 欠と思われる。

4. 症状

精神遅滞、先天性心疾患、甲状腺機能低下症、眼瞼裂狭小、特異顔貌。

5. 合併症

関節拘縮、側彎、内反足などの骨格異常、耳介前部のろう孔。眼瞼裂狭小では、ときに斜視や屈折異常も伴い、眼科的評価は不可欠。停留精巣、性腺機能低下、小頭症、口蓋裂、新生児期哺乳不良、筋緊張低下、脳奇形などを合併することもある。

6. 治療法

対症療法が中心。内反足では固定の他に手術治療を選択することも少なく ない。心奇形についても同様である。眼科的評価は不可欠で、鼻涙管閉塞に対した処置や屈折異常に対しての眼鏡処方なども必要。早期の療育参加やリハビリ テーションは重要である。甲状腺機能低下症は、重度のものはまれだが、甲状腺ホルモン投与を必要とすることが多い。生涯にわたる医療管理はよりよい生活の ために必要。

7. 研究班

ヤング・シンプソン症候群の診断基準作成と実態把握に関する研究班