神経系疾患分野|アレキサンダー病(平成22年度)

あれきさんだーびょう
研究班名簿 一覧へ戻る

1. 概要

病理学的にグリア線維性酸性蛋白(GFAP)、αB-クリスタリン、熱 ショック蛋白などから構成されるローゼンタル線維を星状膠細胞に認めることを特徴とする希な遺伝性神経変性疾患である。臨床的には発症年齢により、乳児 型、若年型、成人型に分類される。原因遺伝子としてGFAP遺伝子が注目されており、近年では遺伝子検査が確定診断法として主流になりつつある。しかし、 GFAP変異と発症病態・臨床型との関連は不明である。病態はまだ解明されておらず、効果的な治療方法もなく、長期にわたる療養生活を必要とする難治性神 経疾患である。

2. 疫学

2009年に「アレキサンダー病の診断基準の作成、全国調査、病態解 明・治療法開発のための研究」班で実施した全国有病者数調査の結果から、本邦での有病者数は約60名と推定される。男女差は明らかでない。臨床病型別では 成人型が全体の約半数、乳児型が約1/3、若年型が約1/5である。GFAP遺伝子変異が約90%の症例で認められる。家族内発症は成人型で約65%、乳 児型・若年型ではまれである。

3. 原因

GFAP遺伝子変異による機能獲得が原因と考えられている。病態としてはGFAP凝集体が細胞毒性をもつとする研究やGFAP凝集体に対する細胞内タンパク質分解系の異常が病態に関与するという研究結果などがある。遺伝子変異と臨床型との関連は不明。

4. 症状


(1)乳児型:発症時期は生下時から2歳ごろまでで、学童期以前に死亡することが多いとされるが、長期生存例もまれではない。症状はけいれん、精神運動発 達遅延、大頭症、痙性麻痺が主なものである。頭部MRIにて前頭部優位の広範な大脳白質異常、基底核・視床の異常、脳室周囲縁取りの異常、脳幹異常、造影 効果が認められる。

(2)若年型:発症時期は2歳から10歳代。錘体路症状、球麻痺、運動失調、軽度の精神発達遅延をきたし、臨床症状、MRI画像にて乳児型、成人型の一方あるいは両者の特徴を有する。

(3)成人型:10代以降の発症。筋力低下(しばしば下肢優位、左右差あり)、錘体路症状、運動失調、球症状、膀胱直腸障害、睡眠異常など延髄、頚髄の症 候をきたす。MRIでは延髄・頚髄の信号異常あるいは萎縮が特徴である。

5. 合併症

乳児型では嘔吐などの消化器症状や発育不良が多いとされる。

6. 治療法

根治的治療はない。けいれんに対して抗てんかん薬が有効な例が多い。痙性麻痺に対しては抗痙縮薬が用いられる。また、TRH投与により臨床症状の改善が認められたという報告がある。

7. 研究班

アレキサンダー病の診断基準および治療・ケア指針の作成、病態解明・治療法開発のための研究班