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難治性の肝炎のうち劇症肝炎(指定難病ではありません)

なんちせいのかんえんのうちげきしょうかんえん

この病気は新たな制度の対象とならない為、医療費助成が受けられるのは平成26年12月末までです。
平成26年12月31日以前に認定されている方は、平成27年1月以降も医療費助成が受けられます。
(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 劇症肝炎とは

肝臓は、身体に必要な物質を合成し、薬物や身体に有害となる物質を解毒、排泄するなど、生命活動にとって重要な役割を担っています。肝臓の中で、これらの働きを担う細胞(肝細胞)が急激にかつ大量に壊れることによって、その機能が低下する病気が劇症肝炎です。肝臓の機能が低下すると、血液を凝固させるために必要なタンパク(凝固因子)の産生が失われ、また、身体に有害な物質が蓄積して意識障害(肝性脳症)が出現します。もともと健康な人に全身のだるさ、吐き気、食欲不振など急性肝炎と同じ症状が現れてから8週間以内に肝性脳症が見られ、血液中の凝固因子が著しく低下した場合に劇症肝炎と診断します。肝細胞は増殖する能力に富んでいるために、急性肝炎の大部分は、肝細胞が壊されても自然に元の状態に戻ります(肝再生)。しかし、劇症肝炎ではこの破壊が広くおよぶために、肝細胞の増殖が障害されて、適切な治療を行わないと高頻度に死に至ります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

わが国における劇症肝炎の患者さんの数は年間約400人と推定されています。これは急性肝炎患者さんの数の約1%に相当します。

3. この病気はどのような人に多いのですか

劇症肝炎は新生児から高齢者まであらゆる年齢層で、男女を問わず発症します。最近では、B型肝炎ウイルスのキャリア持続感染者)からの発症や、肝臓病以外の病気のために薬物治療を受けていた患者さんが劇症肝炎になる場合が増える傾向にあります。

B型肝炎ウイルスのキャリアの方は、肝機能が正常な場合でも劇症肝炎となることもあることを理解して、尿が紅茶のように褐色になる、皮膚や目の白い部分が黄染するなど黄疸が疑われる時には、直ちに医療機関を受診して下さい。B型肝炎ウイルスのキャリアは、他の病気に対して副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制薬や抗癌薬を投与された際に劇症肝炎を発症することがあります。また、B型肝炎ウイルスに感染して既に治癒したと判断された方(既往感染)でも免疫抑制薬や抗癌薬を投与した後に、キャリアの場合よりは低頻度ですが、劇症肝炎を発症する場合があります。他の病気でこれらの薬による治療を受ける前には、主治医の先生と相談して、必要に応じて肝臓専門医を受診して、予防処置を行って下さい。また、B型肝炎ウイルスは性交渉を介して感染し、キャリアや既往感染の方以外でも劇症肝炎を発症する場合もあります。パートナーがB型肝炎ウイルスのキャリアの場合にはワクチンによる予防が可能です。

4. この病気の原因はわかっているのですか

劇症肝炎は、肝炎ウイルスの感染,薬物アレルギー,自己免疫性肝炎などが原因で起こります。わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めています。これには、B型肝炎ウイルスのキャリアが発症する場合と、キャリアから性交渉などを介して感染して発症する場合とがあります。A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染もその頻度はわずかですが劇症肝炎になる場合があります。

B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、原因のわからないもので、全体の約30%を占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎による劇症肝炎は、いずれも10%以下です。しかし、原因のわからない劇症肝炎患者さんには、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎によるものが含まれている可能性があります。また、A型やB型肝炎ウイルスが原因の場合には、急性肝炎と原因が同じなのにもかかわらず、なぜ一部の人で劇症肝炎になるのかは、わかっていません。

5. この病気は遺伝するのですか

劇症肝炎は遺伝することはありません。しかし、B型肝炎ウイルスは母親がキャリアであると、出産時に感染した子供がキャリアになることがしばしばみられます。もし、親、兄弟または子供がB型肝炎ウイルスのキャリアであることが判明した場合は、念のためご自分にはウイルスが感染していないかを血液検査で調べる必要があります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

最初の症状としては、発熱、筋肉痛などの感冒様の症状、全身のだるさや食欲不振などが多くみられます。次いで、尿が濃褐色になるとともに黄疸が見られるようになります。最初の症状が軽度で、黄疸がでて初めて病気に気づく場合もあります。

急性肝炎では黄疸がでてからは全身のだるさなどの症状が軽くなりますが、劇症肝炎に進む場合は、これらの症状が持続するかまたは逆に強くなり、やがて肝性脳症が現れます。

肝性脳症の程度は様々です。昼と夜の睡眠リズムの逆転、服装や姿勢が乱れていても無関心でいたり、さらには、場所、人、時間などを間違えたり、興奮して暴れたりするようにもなります。重症になりますと、眠ったままで呼びかけや痛み刺激に反応しない状態(肝性昏睡)に陥ります。

劇症肝炎では、細菌の感染や腎臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器の障害が高頻度に起こります。そのため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔内や注射針で刺した部位からの出血など、色々な症状が次々と現れることになります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、エンテカビルなどの核酸アナログ製剤やインターフェロンを用いた抗ウイルス療法が最も有効です。また、自己免疫性肝炎や薬物アレルギーが原因の場合は副腎皮質ステロイドを大量に点滴静注する治療を行います。これらの治療を肝性脳症が現れる前から行うことにより、劇症肝炎への進行を抑えることができることもあります。

劇症肝炎となった場合には、肝臓の働きを補うための人工肝補助療法を行って、身体に必要な物質を補充し、有害な物質を取り除きます。この治療法には、患者さんの血液から血球以外の成分(血漿)を取り除き、これを健康な人の血漿と交換する方法(血漿交換)と、腎臓が悪い患者さんで行われている血液透析を応用した方法(血液濾過透析)があります。また、全身のいろいろな臓器の障害に対しても適切な治療を行う必要があります。これらの治療によって肝臓の機能が低下している期間を乗り切れると、肝臓が再生してくるので救命することが可能です。

しかし、劇症肝炎ではこのような治療によっても肝臓の機能が回復しないことがあり、その場合は肝移植を行うことになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合(生体部分肝移植)があります。わが国では生体部分肝移植が広く行われてきましたが、平成22年に法律が改正され脳死肝移植の実施数が増えており、劇症肝炎の患者さんも脳死肝移植を受けることが多くなっています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

劇症肝炎は、最初の症状に気づいてから肝性脳症が現れるまでの期間が10日以内の場合(急性型)と11日以降の場合(亜急性型)に分類され、経過は急性型の方が良好です。

1998-2009年に劇症肝炎となった患者さんについて全国の主な病院から集めてまとめた結果によると、肝移植を実施せずに内科的な治療のみを行った患者さんは、急性型の場合には約50%、亜急性型の場合には約20%が救命されています。A型肝炎ウイルスが原因の場合には急性型がほとんどで経過は良好でした。また、肝移植を受けた患者さんは約80%が救命されています。

肝移植を受けずに救命された場合には、通常は後遺症を残すことなく治癒します。しかし、肝臓が肝硬変にまで進行していまい、その後の管理が必要となる場合もあります。肝移植により救命された後は、移植された肝臓が他人のものであるので、拒絶反応がおこらないように免疫抑制薬を一生涯服用する必要があります。
 


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情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(難治性の肝・胆道疾患)
研究班名簿   
情報見直し日平成27年3月18日