コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素欠損症(平成21年度)

こはくさんあるでひどだっすいそ(SSADH)けっそんしょう
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1. 概要

重要な神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の先天代謝異常のひとつで、Succinic semialdehyde dehydrogenase (SSADH)の欠損により、GABAの代謝産物であるsuccinic semialdehydeがsuccinic acidに変換されないため、4-hydroxybutyric acidが増加する。発達遅滞、、筋緊張低下、睡眠障害、多動、小脳失調、けいれんなどの神経症状がみられる。尿中有機酸分析における4- hydroxybutyric acidの異常な上昇が診断の指標になる。

2. 疫学

3名

3. 原因

コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素(Succinic semialdehyde dehydrogenase : SSADH)の先天的な欠損による疾患である。コハク酸セミアルデヒド(succinic semialdehyde : SSA)は通常コハク酸(succinic acid)に代謝されるが、SSADH欠損によりコハク酸セミアルデヒドの濃度が上昇すると4-ヒドロキシ酪酸(4-hydroxybutyric acid)に代謝され4-ヒドロキシ酪酸尿症を呈する。SSADH欠損症の責任遺伝子は6番染色体に存在するALDH5A1とされている。非常にまれな疾 患であり、海外では1980年に初めて報告された後150例以上の報告があるが、日本では2001年に名古屋大学から報告があったのを最初に3例の報告が あるのみである。症状が様々かつ非特異的であるため、実際には正確な診断を受けていない症例も存在する可能性がある。本研究でさらなる患者の集積を行い評 価することで、重要な神経伝達物質であるGABAに関連する代謝異常が発達過程の脳でどのように神経学的異常を引き起こしてくるのかを解明する。

4. 症状

神経症状は乳児期からみられ、発達遅滞、精神遅滞、言語表出障害、筋緊張低下、睡眠障害、不注意、多動、不安、腱反射低下、非進行 性小脳失調、けいれんなど多彩である。通常は非進行性であるが、まれに(10%)進行性の場合がある。頭部MRIでは淡蒼球の異常がみられやすい。以上の ような症状、所見がみられ、他の原因疾患が特定されていない場合には尿中有機酸分析を行い、4-ヒドロキシ酪酸の上昇を確認する。4-ヒドロキシ酪酸の上 昇が確認された場合には培養リンパ芽球を用いたSSADHの活性測定を行い、その低下から診断に至る。報告例により予後は様々で重症の患者は死にいたる。

5. 合併症

けいれん発作、てんかんの合併は約半数にみられ、全身強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作や未分類のものが報告されている。不注意、多動、不安など行動の問題も半数前後の患者に認められる。

6. 治療法

抗けいれん薬のVigabatrinの内服が行われるが、効果について確証はない。L-calnitineが低下している症例でcarnitineの投与が効果があるという報告がある。抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウムは一般的に禁忌とされる。

7. 研究班

小児神経伝達物質病の診断基準の作成と患者数の実態調査に関する研究班