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表皮水疱症(指定難病36)

ひょうひすいほうしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
表皮水疱症は、主として先天的素因により、日常生活で外力の加わる部位に水疱が反復して生ずることを主な臨床症状とする一群の疾患である。本症は、遺伝形式、臨床症状並びに電顕所見に基づき30以上の亜型に細分されるが、各亜型間に共通する特徴をまとめることにより、7型、4型又は3型に大別される(表)。これらの分類法のうち、5大病型、すなわち、①単純型、②接合部型、③優性栄養障害型④劣性栄養障害型、及び⑤キンドラー症候群に分ける方法が最新の分類である。
 
2.原因
一般に、単純型と優性栄養障害型は常染色体優性遺伝、接合部型と劣性栄養障害型、キンドラー症候群は常染色体劣性遺伝形式をとる。単純型の水疱はトノフィラメントの異常に起因する基底細胞やヘミデスモゾームの脆弱化に基づく。前者は、ケラチン5、14遺伝子、後者はプレクチン遺伝子異常に起因する。プレクチン遺伝子の変異で、幽門閉鎖や筋ジストロフィーを合併することがある。
接合部型は、重症なヘルリッツ型と比較的軽症な非ヘルリッツ型に大別される。ヘルリッツ型は、ラミニン332(以前はラミニン5と呼ばれる)の遺伝子の変異が原因である。
一方、非ヘルリッツ型の水疱は、その原因として17型コラーゲン、ラミニン332の遺伝子変異が同定されている。また、α6やβ4遺伝子の変異で、幽門閉鎖を合併することがある。
栄養障害型は、優性型も劣性型も、係留線維の構成成分である7型コラーゲンの遺伝子変異で生じる。
キンドラー症候群はキンドリン1の遺伝子変異で生じる。
 
3.症状
一般に、四肢末梢や大関節部などの外力を受けやすい部位に、軽微な外力により水疱やびらんを生ずる。水疱・びらん自体は、比較的速やかに治癒し、治癒後、瘢痕も皮膚萎縮も残さないものもあるが、難治性で治癒後に瘢痕を残すものもある。
合併症としては、皮膚悪性腫瘍、食道狭窄、幽門狭窄、栄養不良、貧血(主に鉄欠乏性)、関節拘縮、成長発育遅延などがあり、特に重症型において問題になることが多い。
 
4.治療法
現段階では根治療法はなく、対症療法のみである。その対症療法も病型により異なるので、まず正確な病型診断が必須不可欠である。最新の知見として、劣性重症汎発型の栄養障害型表皮水疱症において、骨髄移植を行い、皮疹の改善を認めたという報告がなされている。
また、本症は病型によっては種々の合併症を発生することにより、病状が増悪し、患者の日常生活を著しく制限することがあるので、各種合併症に対する処置も必要になる。さらに、本症は難治の遺伝性疾患であるため、家系内患者の再発の予防にも配慮する必要がある。
 
5.予後
生後間もなく死に至るものから普通の社会生活を送ることが可能な軽症な病型もあるため、まず正確な病型診断が必要不可欠である。
接合部型あるいは劣性栄養障害型表皮水疱症では、有棘細胞癌などの皮膚悪性腫瘍を併発することが多く、予後を左右することがある。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数(平成24年度医療受給者証保持者数)
347人
2.発病の機構
不明(遺伝子異常が示唆されている。)
3.効果的な治療方法
対症療法のみ
4.長期の療養
必要(生後間もなく死に至るものから普通の社会生活を送ることが可能な軽症な病型もある。)
5.診断基準
あり
6.重症度分類
中等症以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班」
研究代表者 慶應義塾大学医学部皮膚科 教授 天谷雅行
 
 
 
<診断基準>
1.概念
表皮水疱症は、主として先天的素因により、日常生活で外力の加わる部位に水疱が反復して生ずることを主な臨床症状とする一群の疾患である。本症は、遺伝形式、臨床症状及び電顕所見に基づき30以上の亜型に細分されるが、各亜型間に共通する特徴をまとめることにより、7型、4型又は3型に大別される。これらの分類法のうち、5大病型、すなわち、①単純型、②接合部型、③優性栄養障害型④劣性栄養障害型、及び⑤キンドラー症候群に分ける方法が最新の分類である。
 
2.病名診断(表皮水疱症であるか否かの診断)
(1)主要事項
①臨床的事項
(a)軽微な機械的刺激により皮膚(ときには粘膜)に容易に水疱を生ずる。
(b)原則として乳幼児期に発症し、長年月にわたり症状が持続する。
(c)薬剤・感染・光線過敏・自己免疫・亜鉛欠乏・重症魚鱗癬・皮膚萎縮症による水疱症を除外で
きる。
②病理学的事項:光顕検査、電顕検査又は表皮基底膜部抗原局在検査により、水疱形成の初発位置は表皮・真皮境界部(表皮内、接合部又は真皮内のいずれか)に一定している。
(2)診断のカテゴリー:①(a) (b) (c)の全てを満たし、かつ②を満たすものを表皮水疱症と診断する。
 
3.病型診断(表皮水疱症のうちどの病型であるかの診断)
電顕検査又は表皮基底膜部抗原局在検査により水疱初発位置を確定したのち、次のように病型診断を行う。
(1)水疱初発位置が表皮内の場合:単純型と診断する。
(2)水疱初発位置が接合部の場合:接合部型と診断する。
(3)水疱初発位置が真皮内である場合
①家族内に患者が2人以上発生している場合で、
(a)患者が親子関係にあるものは優性栄養障害型と診断する。
(b)患者が同胞関係にあるものは劣性栄養障害型と診断する。
②家族内に患者が1人のみ(孤発例)の場合で、
(a)指間癒着が著しいものは劣性栄養障害型と診断する。
(b)著しい指間癒着が認められない場合又は乳幼児のためこれらの症状に関する判定が困難な
場合は、
ア)特定の施設に依頼して患者及び両親の血液DNAにつき、VII型コラーゲン遺伝子(COL7A1)遺伝子検査を実施する。その結果、VII型コラーゲン遺伝子(COL7A1)が患児のみに認められ健常な両親に認められなかった場合は優性栄養障害型と診断する。いずれかの遺伝子の病的変異が患者のみならず健常な両親にも認められた場合は、劣性栄養障害型と診断する。
イ)遺伝子検査が実施できない場合は、患児の年齢が3~5歳に達し、症状の完成を待ってから鑑別診断を行う。
(4)水疱形成部位が表皮内、接合部、真皮内のいずれの場合でも、皮膚所見で進行性の多型皮膚萎縮症状や光線過敏症があり、組織学的所見で基底膜の重層化を確認した場合はキンドラー症候群と診断する。


 
 
 
 
表:表皮水疱症の分類

4大分類

5大分類

8大分類

35病型

単純型

単純型

優性単純型

Köbner型

 

 

 

Weber-cockayne型

 

 

 

Dowling-Meara型

 

 

 

色素異常型

 

 

 

色素異常を伴う疱疹状型

 

 

 

Ogna型

 

 

 

表在型

 

 

 

棘融解型

 

 

劣性単純型

筋ジストロフィー合併型

 

 

 

致死型

 

 

 

Kallin型

 

 

 

劣性疱疹状型

 

 

伴性劣性単純型

Mendes da Costa型

接合部型

接合部型

劣性接合部型

Herlitz型

 

 

 

軽症汎発性萎縮型(非Herlitz型)

 

 

 

限局性萎縮型

 

 

 

反対性萎縮型

 

 

 

進行型

 

 

 

瘢痕性接合部型

 

 

 

PA-JEB症候群

 

 

優性接合部型

Traupe-Belter-Kolde-Voss型

栄養障害型

優性栄養障害型

優性栄養障害型

Cockayne-Touraine型

 

 

 

Pasini型

 

 

 

前頸骨型

 

 

 

新生児一過性型

 

 

 

Bart型

 

 

 

限局型

 

 

 

優性痒疹型

 

劣性栄養障害型

劣性栄養障害型

Hallopeau-Siemens型

 

 

 

非Hallopeau-Siemens型

 

 

 

限局型

 

 

 

求心型

 

 

 

強皮症型

 

 

 

劣性痒疹型

その他の病型

キンドラー症候群

 

 

 
 
 
<重症度分類>
重症度判定スコア表
中等症以上を対象とする。

病状・状態

3点

2点

1点

0点

皮膚症状

 

 

 

 

皮膚水疱の新生

連日

1週間に数個

1か月に数個以下

なし

粘膜水疱の新生

連日

1週間に数個

1か月に数個以下

なし

潰瘍・びらんの面積

2%以上

0.5~2%

0.5%以下

なし

哺乳障害(乳児)

常時困難

頻回困難

まれに困難

なし

爪甲変形・脱落

全指趾

10指趾以上

10指趾未満

なし

半年以上続く潰瘍

2つ以上あり

1つあり

過去にあり

なし

掻破による症状悪化

連日

1週間に数日

1か月に数日以下

なし

頭部脱毛

全体

広範囲

部分的

なし

掌蹠の角化

全体

広範囲

部分的

なし

瘢痕形成

関節拘縮を伴う

肥厚性瘢痕

萎縮性瘢痕

なし

手指や足趾の癒着

棍棒状

DIP関節まで

PIP**関節まで

なし

合併症

 

 

 

 

歩行障害

車椅子使用

歩行が困難

走行が困難

なし

開口障害(開口時の切歯間距離)

10mm未満

10~19mm

20~30mm

なし

歯牙形成不全

全て

半分以上

数本

なし

眼瞼癒着

開眼時疼痛あり

開眼制限あり

開眼制限なし

なし

眼瞼外反

閉眼不能

閉眼障害あり

閉眼障害なし

なし

角膜混濁・翼状片

本が読めない

視力障害あり

視力障害なし

なし

食道狭窄  

水分摂取困難

固形物摂取困難

軽度嚥下障害

なし

心不全

安静時動悸
息切れ

歩行時動悸
息切れ

運動時動悸
息切れ

なし

貧血(Hb g/dL)

5.0未満

5.0~9.9

10以上

なし

低栄養(Alb g/dL)

2.0未満

2.0~2.9

3.0以上

なし

蛋白尿

尿蛋白4+以上

尿蛋白3+

尿蛋白2+以下

なし

*DIP:distal interphalangeal joint(遠位指節間関節)
**PIP:proximal interphalangeal joint(近位指節間関節)
 
重症度判定基準:軽症:3点以下、中等症:4~7点、重症:8点以上
 
 
 
 
注)表皮水疱症の診断を得た上で、以下の事項が明らかであれば上記の点数に関係なく重症と認定する。 
1)ヘルリッツ型表皮水疱症の確定診断がついている場合
(ラミニン5蛋白の完全欠損又は同遺伝子の蛋白完全欠損型変異を証明)
2)家族(2親等以内)にヘルリッツ型表皮水疱症の罹患者がいる場合
3)幽門閉鎖を合併する場合
4)筋ジストロフィー合併型の確定診断がついている場合
(プレクチン蛋白の完全欠損または同遺伝子の蛋白完全欠損型変異を証明)
5)家族(2親等以内)に筋ジストロフィー合併型表皮水疱症の罹患者がいる場合
6)重症劣性栄養障害型の確定診断がついている場合
(VII型コラーゲン蛋白の完全欠損又は同遺伝子の完全欠損型変異を証明)
7)家族(2親等以内)に重症劣性栄養障害型表皮水疱症の罹患者がいる場合
8)有棘細胞癌の合併又はその既往がある場合

 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

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情報提供者
研究班名 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
情報更新日平成29年4月24日