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肝型糖原病(指定難病257)

かんがたとうげんびょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
糖原病は糖代謝の経路に関与する酵素の異常によって発症する疾患群。糖をエネルギーとして蓄積するためにグリコーゲンへと変換する系、及び蓄積したグリコーゲンを代謝する系に関わる酵素の先天的異常により糖代謝が障害され、組織にグリコーゲンが蓄積する。障害を受けた酵素の発現部位により肝型・筋型に大別できる。しかし酵素発現の臓器特異性から、肝臓、筋肉以外の他臓器の障害が臨床症状として並存していることもある。肝型糖原病にはI、III、IV、VI、IX型があり、低血糖、肝機能障害、成人期に肝硬変、肝腫瘍を呈するものもある。
 
2.原因
  以下の酵素をコードする遺伝子の異常により起こる。
I型

Ia 型 グルコース-6-ホスファターゼ欠損症

Ib 型 グルコース-6-ホスファターゼトランスポーター異常症

III型

IIIa IIIbグリコーゲン脱分枝酵素欠損症

IIIc グルコシダーゼ欠損症

IIId トランスフェラーゼ欠損症

IV型

アミロ1,4→1,6トランスグルコシラーゼ欠損症

V型

肝グリコーゲンホスホリラーゼ欠損症

IX型

ホスホリラーゼキナーゼ欠損症

IXa αサブユニット異常症 (肝型)

IXb βサブユニット異常症 (肝筋型)

IXc γサブユニット異常症 (肝型)

3.症状
I型は、糖新生で最も重要な酵素の欠損であるため、低血糖・肝腫大・乳酸アシドーシスを来す。低血糖は重篤で頻回のことも多い。人形様顔貌、成長障害、高脂血症、高尿酸血症を認める。Ib型では好中球減少を認める。III型は進行性の(心)筋症がみられる。IV型は筋症状を伴う。
 
4.治療法
血糖値の維持が目標。食事療法(乳糖、ショ糖除去、果糖の制限)、特殊ミルク、コーンスターチの摂取、特に夜間頻回又は持続補給を行う。好中球減少にはG-CSF定期投与、高尿酸血症には尿酸降下剤を用いる。急性期はグルコース静注による低血糖の改善、アシドーシスの補正を行う。一部の症例で肝移植が行われている。
 
 
5.予後
低血糖発作反復による発達遅滞、てんかん。I型では肝腺腫など肝腫瘍、腎不全、出血傾向、骨粗鬆症。IV型は肝硬変、肝不全、脾腫。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約1,200人 
2.  発病の機構
不明(遺伝子異常による。)
3.  効果的な治療方法
未確立(食事療法など。)
4.  長期の療養
必要
5.  診断基準
あり(日本先天代謝異常学会作成の診断基準あり。) 
6.  重症度分類
先天性代謝異常症の重症度評価を用いて、中等症以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「日本先天代謝異常学会」
「小児希少難病(先天性アミノ酸代謝異常症等)の新規治療導入状況と実態の把握及び長期フォローアップ体制の確立」 
研究代表者 熊本大学大学院生命科学研究部小児科学 教授 遠藤文夫
「厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症)、尿素サイクル異常症(CPS1欠損症,OTC欠損症)、肝型糖原病の新規治療法の確立と標準化に関する研究」   
研究代表者 国立成育医療研究センター内分泌代謝科 医長 堀川玲子
 
 
<診断基準>
日本先天代謝異常学会の診断基準を用いて、それぞれの病型に確定診断された例(Definite)を対象とする。
 
【糖原病I、III、VI、IX型】
A.症状
主要症状には繰り返す低血糖、人形様顔貌、低身長、発育障害、発達障害、肝腫大(腹部膨満)がある。
1.I型
繰り返す低血糖(アシドーシスあり。)、人形様顔貌、発育障害、発達障害、肝腫大、筋萎縮、出血傾向(鼻出血)。
Ib型では易感染性を認めることがある。
2.III型
IIIa型 低血糖、肝腫大、低身長を呈するが、I型に比し症状が軽度である。経過中筋力低下、心筋症を来す。
IIIb型 低血糖、肝腫大、低身長を呈するが、筋症状を呈さない。
IIId型 IIIa型と同様の症状を示す。
3.VI型
低血糖、肝腫大、低身長を呈するが、I型に比し症状が軽度であり、無症状例もある。
4.IX型
低血糖、肝腫大、低身長を呈するが、I型に比し症状が軽度であり、無症状例もある。IXb型では筋症状は軽いことが多い。
 
B.検査所見
1.  参考となる検査所見
①低血糖の証明
②血糖日内変動にて糖尿病パターンを示す。
③乳酸の上昇
④肝機能障害
⑤高尿酸血症
⑥画像検査
肝臓超音波検査で輝度上昇。肝臓CTでは信号強度の上昇。ただし、高脂血症の程度により脂肪沈着のためCT値低下を示す場合もある。
⑦Ib型では好中球減少
⑧IIIa型では高クレアチンキナーゼ(CK)血症
2.  診断の根拠となる特殊検査
①食後の乳酸変化あるいは糖負荷試験
空腹時高乳酸血症を呈する場合I型の疑いが強く、I型では食後もしくは糖負荷で乳酸値は低下する。
②グルカゴン負荷試験
III型では空腹時の試験では血糖が上昇しない。食後2時間の試験では血糖が上昇する。
VI型では空腹時及び食後2時間の血糖が上昇しない。
IX型では空腹時及び食後2時間の血糖が上昇する。
③肝生検
肝組織にグリコーゲンの著明な沈着及び脂肪肝を認める。
④筋生検
肝筋型では筋組織に著明なグリコーゲンの蓄積を認める。特にIII型ではvacuolar myopathyの像を呈する。
⑤酵素診断
末梢血白血球もしくは生検肝組織、生検筋組織(IIIa)を用いた酵素診断が可能である。ただし、IX型のうち、XLG type2では、赤血球では酵素活性が低下しない。肝組織では酵素診断の信頼性が上昇するが、酵素活性低下がなくてもXLG type2は否定できない。
⑥遺伝子診断
末梢血リンパ球を用いた遺伝子診断が可能である。I型では日本人好発変異がある。
 
参考:補助検査について
糖負荷試験、グルカゴン負荷試験、ガラクトース負荷試験を糖原病診断のためのFernandes負荷試験という。典型的なパターンを示さない場合がある。特にI型ではグルカゴン負荷試験で急激な代謝性アシドーシスを来した事例があるため、通常I型が疑われる場合にはグルカゴン負荷試験は行わない。遺伝子検査などその他の検査を優先して行う方が安全である。
 
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
糖原病I型:フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症
その他の肝腫大、低血糖を示す疾患、肝炎
 
D.遺伝学的検査
以下の酵素をコードする遺伝子の異常によりおこる。
I型

Ia 型 グルコース-6-ホスファターゼ欠損症

Ib 型 グルコース-6-ホスファターゼトランスポーター異常症

III型

IIIa IIIbグリコーゲン脱分枝酵素欠損症

IIIc グルコシダーゼ欠損症

IIId トランスフェラーゼ欠損症

VI型

肝グリコーゲンホスホリラーゼ欠損症

IX型

ホスホリラーゼキナーゼ欠損症

IXa αサブユニット異常症 (肝型)

IXb βサブユニット異常症 (肝筋型)

IXc γサブユニット異常症 (肝型)

 
 
E.酵素活性
以下の酵素活性低下を認める
I型

Ia 型 グルコース-6-ホスファターゼ

Ib 型 グルコース-6-ホスファターゼトランスポーター

III型

IIIa IIIbグリコーゲン脱分枝酵素

IIIc グルコシダーゼ

IIId トランスフェラーゼ

VI型

肝グリコーゲンホスホリラーゼ

IX型

ホスホリラーゼキナーゼ

 
<診断のカテゴリー>
Definite
酵素活性又は、遺伝子解析で診断されたものをDefiniteとする。
Possible
①主要症状及び臨床所見の項目のうち、肝機能障害、低血糖もしくは肝腫大のいずれか1つが存在し、参考となる検査のうち糖負荷試験で乳酸低下を認めた場合は、糖原病I型のPossible例とする。
②主要症状及び臨床所見の項目のうち、肝機能障害、低血糖又は肝腫大のいずれか一つが存在し、参考となる検査のうち糖負荷試験で糖原病I型のPossible例とならなかった症例は、I型以外の肝型糖原病のPossible例とする。
 
 
【IV型糖原病】
A.症状
1.臨床病型
①肝型(重症肝硬変型)
②非進行性肝型
③致死新生児神経・筋型
④幼児筋・肝型
⑤成人型(ポリグルコサン小胞体病)
2.主要症状
①肝型(重症肝硬変型)では、低血糖は認めず、乳児期に進行する肝不全、肝硬変、脾腫、筋緊張低下を示す。徐々に肝硬変、門脈圧が亢進する。
②非進行性肝型では、肝機能異常のみで肝硬変を示さない。
③致死新生児神経・筋型では、重度の神経症状を示す。
④幼児筋・肝型筋力低下、肝機能異常を示す。
⑤成人型では、40歳以降に認知症、神経症状を呈する。
 
B.検査所見
1.参考となる検査所見
①肝機能障害(AST、ALTの上昇)。
②肝組織所見
光顕では、間質の線維化、肝細胞の腫大、細胞質内に好塩基性のジアスターゼ耐性のPAS陽性封入体を認める。
電顕ではアミロペクチン様グリコーゲンが凝集蓄積する。
2.診断の根拠となる特殊検査
グリコーゲン分枝鎖酵素活性の低下を証明する(赤血球又は肝臓)又は、遺伝子検査。
 
C.鑑別診断
他の肝硬変を呈する疾患
致死新生児神経・筋型では他のfloppy infantを示す疾患
 
D.遺伝学的検査
アミロ1,4→1,6トランスグルコシラーゼ遺伝子異常
 
E.酵素活性
アミロ1,4→1,6トランスグルコシラーゼ活性低下
 
<診断のカテゴリー>
肝組織にアミロペクチン様グリコーゲンが蓄積する場合又は酵素診断あるいは遺伝子診断されたものをDefiniteとする。
 
<重症度分類>
中等症以上を対象とする。

 

先天性代謝異常症の重症度評価(日本先天代謝異常学会)

点数

I

薬物などの治療状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

治療を要しない

b

対症療法のために何らかの薬物を用いた治療を継続している

c

疾患特異的な薬物治療が中断できない

d

急性発作時に呼吸管理、血液浄化を必要とする

II

食事栄養治療の状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

食事制限など特に必要がない

b

軽度の食事制限あるいは一時的な食事制限が必要である

c

特殊ミルクを継続して使用するなどの中程度の食事療法が必要である

d

特殊ミルクを継続して使用するなどの疾患特異的な負荷の強い(厳格な)食事療法の継続が必要である

e

経管栄養が必要である

III

酵素欠損などの代謝障害に直接関連した検査(画像を含む)の所見(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

特に異常を認めない

b

軽度の異常値が継続している    (目安として正常範囲から1.5SDの逸脱)  

c

中等度以上の異常値が継続している (目安として1.5SDから2.0SDの逸脱)      

d

高度の異常値が持続している    (目安として2.0SD以上の逸脱)

IV

現在の精神運動発達遅滞、神経症状、筋力低下についての評価(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

異常を認めない

b

軽度の障害を認める  (目安として、IQ70未満や補助具などを用いた自立歩行が可能な程度の障害)

c

中程度の障害を認める (目安として、IQ50未満や自立歩行が不可能な程度の障害)   

d

高度の障害を認める  (目安として、IQ35未満やほぼ寝たきりの状態)    

V

現在の臓器障害に関する評価(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

肝臓、腎臓、心臓などに機能障害がない

b

肝臓、腎臓、心臓などに軽度機能障害がある
(目安として、それぞれの臓器異常による検査異常を認めるもの)

c

肝臓、腎臓、心臓などに中等度機能障害がある
 (目安として、それぞれの臓器異常による症状を認めるもの)

d

肝臓、腎臓、心臓などに重度機能障害がある、あるいは移植医療が必要である 
(目安として、それぞれの臓器の機能不全を認めるもの)

VI

生活の自立・介助などの状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

自立した生活が可能     

b

何らかの介助が必要      

c

日常生活の多くで介助が必要  

d

生命維持医療が必要     

総合評価

IからVIまでの各評価及び総点数をもとに最終評価を決定する。

(1)4点の項目が1つでもある場合    

重症

(2)2点以上の項目があり、かつ加点した総点数が6点以上の場合  

重症

(3)加点した総点数が3-6点の場合  

中等症

(4)加点した総点数が0-2点の場合   

軽症

注意

診断と治療についてはガイドラインを参考とすること

疾患特異的な薬物治療はガイドラインに準拠したものとする

疾患特異的な食事栄養治療はガイドラインに準拠したものとする

 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 


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情報提供者
研究班名 先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究班
研究班名簿   
情報更新日平成29年4月24日(研究班名簿:平成30年4月更新)