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前頭側頭葉変性症(指定難病127)

ぜんとうそくとうようへんせいしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「前頭側頭葉変性症」とはどのような病気ですか

大脳の前頭葉や側頭葉を中心とする神経細胞の変性・脱落により、人格変化や行動障害、言語障害などが緩徐に進行することを特徴とする神経変性疾患です。また、経過中にパーキンソニズムや運動ニューロン症状をはじめとする種々の程度の運動障害を認める場合のあることも特徴です。アルツハイマー病に比べて疾患の頻度は低いのですが、65歳未満で発症する若年性認知症の比率の多いことが特徴で、臨床的にも物忘れではなく、行動障害や言語障害が中心となるため、診断の遅れる症例や社会的に問題となる症例を多く認めることも特徴です。さらに就労年齢や子育て中の年齢で発症することも多いため、経済面での負担や子供への対応などが大きな問題になることがあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

正確な頻度は不明ですが、約12,000人程度の患者さんが日本にいると推定されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

主に若年期(40歳〜64歳)に発症します。特定の職業に多い、特定の地域に多いということはありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

最近の研究の進歩により、タウ、TDP-43、FUSと呼ばれるタンパク質が変性し、蓄積することが発症に関連することが分かってきました。その中でもタウとTDP-43の頻度が高いことが知られています。前頭葉や側頭葉に限局した神経細胞の脱落を認め、その残存神経細胞にタウやTDP-43、FUSなどの異常蛋白が蓄積するのですが、なぜこのような変化が起こるかは分かっていません。

5. この病気は遺伝するのですか

家族歴は、欧米では30-50%に認めます。日本ではほとんど認めません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

人格変化・行動障害と、言語の障害が2大症状として出現してきます。人格変化や行動障害の具体的な事例としては、抑制が効かない(社会的に不適切な行動、礼儀やマナーが無くなる、衝動的で分別が無い、周囲の目を気にしないなど)、無関心や無気力、共感の欠如(風邪で寝込んでいる妻に対して、いつも通りに平然と食事を要求するなど)、同じ行動や言葉を繰り返す(同じコースを散歩する、同じ食事のメニューに固執する、時刻表的な生活パターンを過ごすなど)、食事や嗜好の変化(アイスクリームや饅頭を何個も食べる、ご飯に醤油や塩をかける、珈琲に何杯も砂糖を入れるなど)などを認めます。
言語障害の具体的な事例としては、富士山や金閣寺の写真を見せても、山や寺ということは理解できても特定の山や寺と認識できない、信号機を提示しても「信号機」と呼称ができず、「見たことない」と言い、その後「青い電気がついとるな」などと答えたりする等の、単語の理解障害に基づく物品の呼称障害が出てきます。
人格変化・行動障害、言語の障害以外にも、パーキンソニズム(ふるえる、動作がゆっくりとなる、関節がかたくなる、転びやすくなる)や運動ニューロン症状(筋力の低下、筋肉の萎縮、身体のつっぱり)を認めることがあります。これらの症状は経過中に種々の程度で合併しうることが知られています。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

根本的な治療方法は未開発ですが、基礎研究レベルでは、様々な取り組みがなされています。
具体的な対応方法として、行動障害に対しては、抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬が一部の症例に有用であることが報告されています。また症例報告レベルではありますが、抗精神病薬や抗てんかん薬が有効となる可能性があります。しかし副作用に対する十分な留意が必要です(これらの薬は、保険適応外の使用となりますので、主治医とよく相談して下さい)。認知機能障害については、本疾患で高頻度に認める遂行機能(ものごとを計画し、順序だてて実行する機能)障害、記憶障害、失語に対して有効性を証明出来た治療薬はありません。また、アルツハイマー型認知症で有用であるコリンエステラーゼ阻害薬は、むしろ一部の症状を悪化させる可能性もあるため注意が必要です。
エビデンスは少ないものの、行動療法をはじめとする非薬物療法も有用で、治療の中心となりえます。特に患者さんの保たれている機能を活かすことや、それまでの生活様式を利用することで行動異常の軽減、さらには介護者の負担を減らすことも可能な場合があります。また、患者さんの行動異常や言語障害の評価に基づいて、それぞれの患者さんの持っている症状に対する理解をご家族が深めていくことや、適切な対応方法を修得していただくことも期待されます。
運動障害としては、運動ニューロンの障害に伴う筋萎縮や筋力低下を示すことがあり、この場合には特に呼吸不全や嚥下障害の出現に十分留意する必要があります。また、動作がゆっくりとなる、関節が固くなる、転びやすくなる、手足や顔が震えるといったパーキンソン症状を示すことがあります。パーキンソン病に有効であるレボドパ製剤は、本疾患で認めるパーキンソン症状に対しては、効果が限定的か無効であることが多いという特徴があります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

進行性の経過を示します。進行の様式としては、行動異常や言語障害自体が悪化する場合と、他の運動症状が合併してくる場合などがあります。
行動異常の重症度は(0が最も軽く、4が最も重い)、
   0:社会的に適切な行動を行える。
   1:態度、共感、行為の適切さに最低限であっても明らかな変化を認める。
   2:行動、態度、共感、行為の適切さにおいて、軽度ではあるが明らかな変化を認める。
   3:対人関係や相互のやり取りにかなり影響を及ぼす中等度の行動変化を認める。
   4:対人相互関係が総て一方向性である高度の障害を認める。
のように分類されます。
また、言語障害の重症度は、同様に
   0:正常な発語、正常な理解が可能。
   1:最低限だが明らかな喚語障害(言いたい語が出てこない)を認める。通常会話では、理解は正常。
   2:しばしば生じる発語を大きく阻害するほどではない程度の軽度の喚語障害、軽度の理解障害を認める。
   3:コミュニケーションを阻害する中等度の喚語障害や、通常会話における中等度の理解障害を認める。
   4:高度の喚語障害、言語表出障害、理解障害により実質的にコミュニケーションが不能の状態。
のように分類されます。
行動異常や言語障害が、全てこのような経過で進行するわけではありません。例えば、早期から3レベルの状態を認める場合や、経過中に、無気力や無関心といった症状が強くなり、行動異常が目立たなくなる場合もあります。
パーキンソン症状や運動ニューロン症状は全経過を通じて全く認めない患者さんから、早期に認める患者さんまで様々です。いずれの病態も進行すると嚥下障害の出現や寝たきり、繰り返す感染症などに関連しますし、運動ニューロン症状は呼吸筋麻痺の出現にもつながり、予後に大きく影響を及ぼす原因となります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

お子様を含めたご家族の病気に対する理解が重要となります。これまで述べてきたように、本疾患では、アルツハイマー型認知症とは異なり、認知症に伴う症状と気づきにくい様々な症状を呈します。また、若年発症の場合には、中々認知症に思いが巡らないこともあります。まずは、どの症状が本疾患に伴うものかを把握するように務めて下さい。
病気の理解が進むと対応方法が改善します。例えば、口に食べ物を詰め込む行動やテーブルマナーの悪さ、介護への抵抗、落ち着きのなさ等が、著しい介護負担と関連していることも知られていますが、症状の理解と適切な対応方法の工夫によって、患者さんの負担はもちろんですが、ご家族の負担が大きく減る場合もあることが知られています。
前頭側頭葉変性症では、初期には記憶は比較的良く保たれていますし、高度の障害を示す言語障害を呈しても、良く調べると一部保たれている言語機能もあります。残されている機能を上手に利用した対応を進めることで、介護負担の改善や、患者さんと介護者の生活の質(QOL)の維持・改善に繋がることもあります。また、決まった時間になると外出してしまい無銭飲食をして周囲に迷惑をかけるような行動も、本疾患へ対応可能なデイケア施設の利用や短期入所などにより、社会的にトラブルとなっている行動を別の問題の少ないもしくは問題の無い行動へと変化させることが可能となる場合もあります。
運動症状については、嚥下障害に伴う窒息や誤嚥性肺炎、姿勢反射障害に伴う転倒、運動ニューロン病変による呼吸不全や四肢筋力低下などに注意する必要があります。
ご家族を含めて社会的に孤立しないことも大切です。平成27年に、本疾患は指定難病となりました。公的支援を適切に受け、疾患に関する情報収集を行い、会社や社会との相互理解を進めていくことが大切です。

関連ホームページのご紹介

若年性認知症コールセンター
http://y-ninchisyotel.net/about/moshikashite.html
 
若年性認知症サポートセンター
http://jn-support.com
 
健康長寿ネット
http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000300/hpg000000265.htm


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研究班名 -  
新規掲載日平成27年12月25日