エプスタイン症候群(指定難病287)

えぷすたいんしょうこうぐん
 

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○ 概要
 
1.概要
エプスタイン症候群は、MYH9遺伝子の異常による先天異常症候群のひとつで、巨大血小板性血小板減少症、顆粒球封入体、進行性腎障害(巣状糸球体硬化症など)、感音性難聴、白内障をともなう常染色体優性遺伝疾患である。
 
2.原因
MYH9遺伝子(22q13.1)のヘテロ接合性変異により発症する。
 
3.症状
軽度の出血症状。進行性の糸球体腎炎と高音域の感音性難聴。白内障はまれにみられる。
 
4.治療法
対症療法である。重篤な出血や手術には血小板輸血を考慮する。腎炎にはアンギオテンシン阻害が有効であるが、その発症をどこまで阻止できるかは依然不明である。腎炎についてはより有効な薬物療法の開発が望まれる。難聴に対しては人工内耳の適応がある。
 
5.予後
血小板減少は生涯不変であるが、腎機能障害(巣状糸球体硬化症)は進行性であり、学童期以降に出現することがあるため定期的な経過観察が必要である。MYH9遺伝子異常部位と腎機能障害の進展速度には明らかな相関がある。
 
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約200人
2.  発病の機構
不明(MYH9遺伝子の異常による。)
3.  効果的な治療方法
未確立(対症療法のみ:アンギオテンシン受容体拮抗薬。)
4.  長期の療養
必要(対象療法のみであるため。)
5.  診断基準
あり
6.  重症度分類
血小板減少はITPの重症度分類でStageII以上、聴覚は高度難聴以上、腎はCKD重症度分類ヒートマップが赤の部分のいずれかを満たす場合を対象とする。
 
○ 情報提供元
「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する調査」研究班(H24-難治等-一般-041)
研究代表者 神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野 教授 飯島一誠
 
 
 
 
 
 
<診断基準>
A.症状
1.  巨大血小板性血小板減少症
2.  進行性腎障害
3.  感音性難聴
4.  白内障
注: 巨大血小板性血小板減少症は生下時から認められるが、2、3に関しては5歳以降に発症する。
 
B.検査所見
1.末梢血塗抹標本染色(顆粒球ミオシンⅡA蛋白局在異常)
2.遺伝子解析(MYH9遺伝子)
最重症型エプスタイン(Epstein)症候群    MYH9遺伝子R702変異、S96変異
中等症エプスタイン(Epstein)症候群   MYH9遺伝子R1165変異、D1424変異、E1841K変異、
エクソン24変異
 
 
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの1.及びBの2項目を全て満たすもの
<重症度分類>
血小板減少はITPの重症度分類でStageII以上、聴覚は高度難聴以上、腎はCKD重症度分類ヒートマップが赤の部分のいずれかを満たす場合を対象とする。
 
(血小板)
特発性血小板減少性紫斑病重症度基準

 

 

臨  床  症  状

血小板数
(×104/µL)

無 症 状

皮下出血*1

粘膜出血*2

重症出血*3

5≦  <10
2≦  <5
<2

I
II

I
III
IV

II
IV
IV

IV
V
V

*1 皮下出血:点状出血、紫斑、斑状出血
*2 粘膜出血:歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、月経過多など
*3 重症出血:生命を脅かす危険のある脳出血や重症消化管出血など
 
聴覚
0 正常           25dB未満
1 軽度難聴     25dB以上40dB未満
2 中等度難聴 40dB以上70dB未満
3 高度難聴     70dB以上90dB未満
4 重度難聴     90dB以上
※500 Hz、1000 Hz、2000Hzの平均値で、聞こえが良い耳(良聴耳)の値で判断。
 
 
 
CKD重症度分類ヒートマップ

 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

平成27年7月1日

  • MYH9遺伝子解析実施機関
    東京女子医科大学腎臓小児科教授 服部 元史
情報提供者
研究班名 小児腎領域の希少・難治性疾患群の全国診療・研究体制の構築研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年3月(名簿更新:令和5年6月)