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若年発症型両側性感音難聴(指定難病304)

じゃくねんはっしょうがたりょうそくせいかんおんなんちょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
若年(40歳未満)で発症する両側性感音難聴をさす。従来から原因不明の感音難聴のうち、両側性に難聴が進行する疾患を「特発性両側性感音難聴」としてきたが、老人性難聴との鑑別が必ずしも容易ではなかった。そこで正確に鑑別診断が行えるよう年齢要件が加えられた。また遅発性難聴を引き起こす原因遺伝子が同定されていること、既知の外的因子、例えば騒音、外傷、薬剤、急性ウイルス感染によるものは除くという除外要件が加えられた。近年、遺伝子との関連が少しずつ明らかにされてきているが病態解明には至っていない。後天的に発症、進行し両側重度難聴・ろうとなる例など様々な経過をとる。本疾患は言語発達や教育のほか社会生活や日常生活に大きな支障を来す。また治療法が未確立であり長期的な療養を必要とするため、本疾患の病態の解明や治療法の開発は重要な課題である。診断基準にもとづいた患者数は多くない。
 
2.原因
若年発症型両側性感音難聴の病態は未だ不明であるが、最近の分子遺伝学の進歩により、さまざまな遺伝子(ACTG1遺伝子、CDH23遺伝子、COCH遺伝子、KCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、TMPRSS3遺伝子、WFS1遺伝子など)の関与が明らかになってきた。しかしながら発症機序に関しては必ずしも明らかになっていない。
 
3.症状
1)両側性の難聴
若年発症の両側性の感音難聴。難聴の程度は軽度から高度まで様々である。軽度、中等度難聴で発症しその後進行し両側重度難聴・ろうとなる例など様々な経過をとる。
   2)随伴症状           
難聴の進行に伴い耳鳴、めまいなどの随伴症状を合併する例も多く、生活の質を低下させたり、うつ状態を招くことがある。
 
4.治療法
1)有効な治療法は確立されておらず、聴力に応じて補聴器あるいは人工内耳による補聴が対症的に行われている。
2)急激に進行した場合には急性感音難聴と同様に副腎皮質ステロイド、血管拡張薬、代謝賦活薬、ビタミン製剤などが用いられているが、その効果に関するエビデンスはなく、現時点では有効な治療法は未確立である。
 
5.予後
発症時期や程度、進行の有無は症例によって異なる。症状の改善は期待できないため長期の療養が必要となり、患者の精神的負担が大きい。また、補聴器や人工内耳の治療を行っても正常聴力にはならないため、QOLの低下は免れない。さらに高度難聴によるコミュニケーション障害により、就学や就労が困難な例も認められる。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約4,000人
2.  発病の機構
不明
3.  効果的な治療方法
未確立 (対症療法や人工内耳などの対症療法。)
4.  長期の療養
必要 (長期にわたって障害が持続、あるいは進行する。)
5.  診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6.  重症度分類
聴力レベルに応じた重症度分類で、高度難聴以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「難治性聴覚障害に関する調査研究班」
研究代表者 信州大学医学部耳鼻咽喉科学講座 教授 宇佐美真一
 
 
<診断基準>
若年発症型両側性感音難聴
 
<診断のカテゴリー>次の3条件を満たす感音難聴のことである。
1.遅発性かつ若年発症である(40歳未満の発症)。
2.両側性である。
     3.遅発性難聴を引き起こす原因遺伝子が同定されており、既知の外的因子によるものが除かれてる。
 
解説
 
1.遅発性の若年発症について
(1)40歳未満での発症が標準純音聴力検査で確認されたもの。
健常人を対象にした大規模調査の結果より、加齢に伴う標準純音聴力検査における聴覚閾値の平均値は125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000 Hz、8000Hzの全周波数にわたり55歳未満では20dB未満であることが明らかとなっており、加齢に伴う聴力の悪化は55歳以降に認められる。したがって40歳未満で難聴があるとすれば医学的には加齢以外の要因によるものであると考えることが妥当である。
 
(2)遅発性の発症あるいは観察期間中の進行が確認できたもの。
・新生児聴覚検査、1歳半健診、3歳児健診、就学時健診のいずれかの時点において難聴がないことが証明できるもの。
・耳鼻咽喉科にて標準純音聴力検査を施行し、観察期間中に難聴の進行があることが証明できたもの。
 
2.両側性について
両側の感音難聴があり、良聴耳が中等度以上の難聴であるもの。両側性とは常に両側が同様な病態を示すという意味ではなく、両側罹患という意味である。したがって、両側性感音難聴で一側のみが進行するという例も含まれる。
 
3.原因について
   (1)既知の遅発性・進行性難聴を引き起こす原因遺伝子が同定されている
既知の遅発性・進行性難聴を引き起こす原因遺伝子としては、現在までに、ACTG1遺伝子、CDH23遺伝子、COCH遺伝子、KCNQ4遺伝子、TECTA遺伝子、TMPRSS3遺伝子、WFS1遺伝子の変異が同定されている。これらの遺伝子変異が同定され、かつ上記の聴力基準を満たす症例は先天性難聴、加齢性難聴とは異なる病態であり、本疾患であると考えることが妥当である。
なお、研究班の実施した大規模調査より、各遺伝子変異による難聴者の占める割合は、難聴者全体(加齢性難聴は除く)の0.14%~1.9%程度であることが明らかとなっている。
 
(2)既知の外的因子が除外されているもの。
例えば純音聴力検査で4000Hzの閾値上昇を認める両側性騒音性難聴、CT検査で側頭骨骨折が認められる両側性外傷性難聴、耳毒性薬剤の使用歴が明らかな薬剤性難聴、ウイルスIgM抗体価上昇を伴う急性ウイルス感染が認められる例など外的因子が明らかなものは除く。
<重症度分類>
以下の重症度分類において3高度難聴以上を対象とする。
 
聴覚障害:
0 25dBHL 未満(正常)
1 25dBHL以上40dBHL未満(軽度難聴)
2 40dBHL以上70dBHL未満(中等度難聴)
3 70dBHL以上90dBHL未満(高度難聴)
4 90dBHL以上(重度難聴)
※500、1000、2000Hzの平均値で、聞こえが良い耳(良聴耳)の値で判断。
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

 

本疾患の関連資料・リンク

「難治性聴覚障害に関する調査研究班」
研究代表者 信州大学医学部耳鼻咽喉科学講座 教授 宇佐美真一


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情報提供者
研究班名 難治性聴覚障害に関する調査研究班  
情報更新日平成29年4月24日