クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群(指定難病281)

くりっぺるとれのねーうぇーばーしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

22歳の女性です。生まれつき右手の親指と人差し指から手首までの範囲に赤あざがあります。今まで医師には単純性血管腫であると説明を受けてきましたが、最近右手の親指と人差し指が、左手に比べて長くなってきました。私はクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群でしょうか?

「赤あざ」と「赤あざの部分の肥大(過成長)」だけでは、クリッペル・トレノネー・ウェバー症候群の診断に至りません。面積が広い単純性血管腫やポートワイン母斑の症例でも、成長につれて患部が健常側に比べて、大きくなったり、長くなったり、太くなったり、膨らんでくることがしばしばあります。クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の診断には、MRI検査・CT検査・血管造影検査などで深部の広範囲に脈管奇形が存在することを確認する必要があります。総合病院でこれらの検査を受けて、皮膚より深い組織(皮下脂肪・筋肉・骨・大きな血管)の状態について医師から説明を受けてください。

15歳の男性です。右前腕に幼少時から皮下腫瘍があり、血管腫であると医師から説明を受けてきました。ほとんど目立たず、痛みもなく、日常生活に支障がないため特に治療を受けずに過ごしてきましたが、徐々に大きくなっています。現在は、右前腕に直径15㎝ほどの柔らかい皮下腫瘍があり、その膨らみを人から指摘されるくらい目立つようになりました。私はクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群でしょうか?

強く圧迫するといったん腫瘍は小さくなるが、圧迫を解除するとすぐにもとの大きさに戻るような血管腫であれば、のう胞状の静脈奇形が疑われます。圧迫をしても大きさがあまり変わらない血管腫であれば海綿状の静脈奇形やリンパ管種が疑われます。触った時にドクンドクンと拍動が触れる血管腫は動静脈奇形が疑われます。どの疾患も成長につれて少しずつ大きくなることが知られています。クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群であるかどうかは、深部の広範囲に脈管奇形が存在することを確認する必要がありますので、症状や経過だけでは診断できません。患部の治療方法を検討するためにもMRI検査・CT検査・血管造影検査などを総合病院で行う必要があります。

3歳女児の母親です。娘がクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群であると診断されました。治療に一番良い病院を教えてください。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群について安全で効果の高い治療方法はありません。外国では深部血管内にレーザーファイバーを挿入して治療を行うことを始めた病院もありますが、治療した症例数が少なく、その効果と医療安全についての報告が待たれます。国内でいくつかの病院を受診してセカンドオピニオンを得ること、患者会に参加して情報交換することは大切です。自宅や職場に近い病院で定期的に診察を受けながら、日常生活に合わせて治療を進めていくことをお勧めします。

クリッペル・トレノネー症候群にシロリムス内服療法は一般的に行われていますか?

本症候群へのシロリムス内服療法の有効性と安全性に関しては、国内で現在検証中の段階です。保険診療ではなく、一般的に普及している治療法にはまだなっていません。

 

情報提供者
研究班名 難治性血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形(リンパ管腫)・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和5年6月)